洋ゲーのお話 『The Coffin of Andy and Leyley』
この記事は、東京大学ゲーム研究会アドベントカレンダー2024、6日目の記事です。
はじめに
連投失礼いたします、昨年に引き続き暇人っぷりを見せつけているヤクガラスです。
昨年は最終的に5本ほど記事を執筆させていただきましたが、今年は何本になりますかね?
ぶっちゃけ書く分には問題ないんですが、当方ゲームは数こなすよりもやりこむタイプなので、さらっと書けるようなネタが若干不足気味なんですよね……。
何はともあれ、今回は少し変わったゲームの紹介です。
皆様、洋ゲーと言えばどんなものを思い浮かべますでしょうか?
有名どころだと、『Grand Theft Auto』とか『Call of Duty』みたいな殺伐とした系統のゲームですかね?あるいは、『Fortnite』みたいな、少しポップな感じのゲームでしょうか?
作品によってさまざまかとは思いますが、和ゲーや大陸ゲーと比較すると総じてド派手な演出や少し過激でダークな表現が目立つ、いろんな意味でクールな感じのゲームが多い、というのが個人的な印象です。
ただ、今回紹介するのはFPSでもクリミナルアクションでもなく、ツクール製のRPGゲームでございます。
銃撃戦や過激なアクションからは一歩身を引いて(全く無いとは言ってない)、シンプルな絵柄と特有のおしゃれな言葉回しで彩られた陰鬱なストーリーを、のんびりと楽しむ作品となっております。
ということで、本日は『The Coffin of Andy and Leyley』のお話です~。
概要
『The Coffin of Andy and Leyley』、直訳すると『アンディとレイレイの棺』というタイトルですね。
このゲームはフィンランド系の女性クリエイター、Nemlei氏が開発したWindows向けのホラーアドベンチャーです。2023年10月13日時点で早期アクセスが開始され、現在も更新中となっています。
現在日本語対応は無く、基本プレイは英語となっていますが、有志が作成した日本語化MODを適用することで日本語でも問題なくプレイできます。
システム要件も大したことは無いので、割とお手軽に遊べる作品ですね。
システム的には、一般的な見下ろし型の探索型アドベンチャーゲームとなっています。複雑なアクションを要求されることは無く、マップ探索と簡単な謎解きでゲームの進められるので、進行に大きく詰まることは少ないかと思います。
作風・ストーリー
さて、問題のゲーム内容の方に入っていきましょう。
まず作風についてですが、Steamのストアページを見ていただくのが一番早いでしょうかね。
About This Game
STORY
Cannibalism and codependency!
と、「!」付きの可愛らしい感じでこのゲームのストーリーテーマを簡潔に書いてくれていますね。
直訳すると、「カニバリズムと共依存!」とのことです。
……何か一気にヤバそうな感じが漂ってきましたね。
これを踏まえて、ここからは登場人物を絡めて、軽くストーリーの内容に入っていきます。ストアページとオープニングの内容から大きく逸脱しないように気を付けますが、ネタバレが気になる方は、一応ご注意ください。
さて、このゲームの主人公にしてプレイヤーが操作する実機となるのが、ストアページの下の方に掲載された画像に移る男女、タイトルにも入っている「アンディ」と「レイレイ」です。
本名は男の子の「アンディ」の方がアンドリュー・グレイヴス、女の子の「レイレイ」の方がアシュレイ・グレイヴスで、名前の通り兄妹です。
ついでに、作者から軽い紹介文が添えられているので、ちょっと見てみましょう。
- Ashley Graves
・20 years old
・very not good
・in fact very bad- Andrew Graves
・22 years old
・exists
・doormat extraordinaire
一つずつ見ていきましょうか。年齢はそのままで大丈夫ですね。20歳と22歳、両者成人した兄妹となります。
アシュレイの項目に「very not good」「in fact very bad」とありますが、「とても良くない子」「というか、とても悪い子」という感じです。至る所の画像で何故か血濡れた包丁を持っていますが、お察しの通り少し危ない子ですね。
アンドリューの方の「exists」は、正直私も良く分かりません……。「ちゃんと生きてるよ!」って明示してる感じですかね?ちなみに、その後の「doormat extraordinaire」は「並外れたドアマット」、意訳すると「めっちゃ尻に敷かれてる子」って感じになります。
テーマにあった「共依存」の部分が若干見えてきましたかね?
二人の人物像ですが、妹のアシュレイは見た目通り、少し頭のねじが外れた快活な女性です。我が儘で、どこか善悪の区別がつかない、というか割と率先して危ないことをしている印象を受けます。
一方の兄、アンドリューですが、妹に振り回されるしっかり者で、悪事に加担させられることに罪悪感を覚える様子を見せる反面、頭に血が上るとさらりと過激な行動を取る危うさを持っています。
凸凹ながらも仲の良い兄妹ですが、ある日二人は、とある事情でアパートの一室に幽閉されることとなります。外界から見捨てられ飢餓の果てに立たされた二人が、アパートからの脱出と生存を目指すのが、本ストーリーの中核となります。
このゲームの見どころ
ネタバレ回避の都合上、あまりはっきりしたことは書けませんが、軽くこのゲームの特徴的な面を紹介していきます。
作品テーマ
前項でも記載しましたが、このゲームのテーマは「カニバリズムと共依存」です。
個人的な印象になりますが、洋ゲーでこのような宗教観に大きく反抗するような内容を扱うものは少ないような気がします。
このゲームでは、一貫して歪な兄妹の関係と、ある種悪魔主義的な要素を含む展開が中心的に扱われており、珍しい部類だと思います。
感覚的には、クトゥルフ神話系のゲーム作品を思い浮かべていただくのが近いでしょうか?
ちなみに本作はマルチエンディングとなっているようで、兄妹関係の行方やオカルティズムへの嵌り方については、プレイヤーの行動次第で分岐していきます。
現状ストーリーは更新途中ですが、ルート次第では先行きがかなり不安になるような展開もあります。
かなり好みが分かれてくる内容ですが、ダークファンタジーやゴシックホラー的なジャンルが好きな人にはお勧めの作品です。
やわらかい雰囲気
再三書いている通り、全体を通して中々に危ういテーマを扱う作品ですが、生々しい陰鬱さのようなものを強く感じることはあまりないかと思います。
というのも、絵柄や演出が全体的に可愛らしく、兄妹間での軽いジョークを交えたやり取りも相まって、合間合間でほのぼのした雰囲気に切り替わるんですよね。
ただ、後から振り返ってみると、「この兄弟、あれだけの状況を経て何でこんなへらへらしてるんだろう?」と気味悪さを感じる面があるかもしれません。
その異常性もまた、ホラーゲームとしての一面を際立たせていると言えるでしょう。
ビジュアルノベルとの区別
突然ですが、当方あまりビジュアルノベルが得意ではなかったりします。理由はいろいろありますが、端的に言うと「文字を読むことがプレイの中心になってしまい、楽しみ方が良く分からないから」となります。
ゲームのストーリーを楽しむこと自体は良いんですが、どうしても述べる要素が強くなると、「小説で良いんじゃね?」と思ってしまうんですよね……。
一方のこのゲームなんですが、ある程度の探索や謎解きが合間に挟まる分、プレイヤー主体のゲームとしての体を維持してくれているんですよね。
文章によるストーリー進行の合間に、ちゃんと休憩する時間をくれるという意味でも、バランスがかなり整ったゲームだと思います。
最後に
ストーリーの面白さで好感を持ったゲームは過去にもいくらかありましたが、概ね和ゲー、大陸ゲーが中心だったんですよね。
各地域で好まれるゲームの傾向とか、習慣とか、あるいは私個人の調査不足とか、色々と要因はあるかと思いますが、個人的にこのゲームは他には類を見ないタイプです。
たかが別の場所で作られたゲームという程度のことですが、その意義はそれなりに大きいものかと思います。
というのも、アメリカンカートゥーンとかこのゲームみたいな感じのイラスト、私好きなんですよね。適度にシンプルで表情が分かりやすく、それでいて最低限の特徴をコンパクトにまとめている感じで、何か見てて飽きも疲れもしないんですよ。
説明に困りますが、この感覚伝わりますかね?
それから、個人的には英語でこのゲームを出してくれたことも嬉しいポイントです。洋画を見る方なら、翻訳後も何か独特の言い回しが残っているのが何となく分かるかと思いますが、実際英語作品の言葉回しってすごくきれいなんですよ。
分かりやすいところだと、先ほどのアンドリューの「doormat extraordinaire」とかでしょうかね?
英語って、日本語と比較するとかなり語彙が少なくて、助詞も少ない分言葉の意味の区切りとか組み換えが難しいんですが、多分その代わりに比喩表現が凄く多彩になっているんだと思います。
ストーリーがきれいな作品なだけに、言葉回しは重要なポイントです。
なるべくなら英語プレイ推奨ですが、日本語MODもかなり英語のニュアンスをきれいに再現してくれているので、十分楽しめるかと思います。
一瞬を競うアクションゲーに疲れた方、少し変わったストーリーを楽しみたい方は、ぜひぜひ遊んでみてください~