ウルデラ言語差小ネタ

 

この記事は、東京大学ゲーム研究会アドベントカレンダー2025、2日目の記事です。

はじめに

TGA22のClomyです。最初の方は軽い記事がいいかなと思ったんですが、新作ゲームに手を出す数と、新たなRTAに手を出す数があまり変わらない人間がいいネタが思いつかなかったので、ニッチな小ネタでお茶を濁そうかと思います。

ということで、自分がRTAをよくやっている『星のカービィ ウルトラスーパーデラックス』のテキストの言語差について紹介します。しかも、タイムに関わる部分だけ!

ゲーム紹介

星のカービィ ウルトラスーパーデラックス』は、2008年に発売されたニンテンドーDS用アクションゲームで、1996年発売の『星のカービィ スーパーデラックス』のリメイク版です。カービィおなじみのコピー能力はもちろん、様々なゲームモードのオムニバス形式の作品です。(会誌第126号(2025五月祭会誌)より。懐かしいね。)

言語差比較

実は日本版と、非日本版でそもそもゲームの仕様の違いが多少あります。特に日本版は北米版の次に発売されているのですが、なぜか日本版の方がバグが多かったりします。その辺の話が気になる方はカービィシリーズ Speedrun Wikiの該当ページを見てみてください。

先述の通り、今回はあくまでRTA/IGTAに影響する「テキストの量による表示時間の差」にのみ注目します。具体的なテキスト比較が気になる方はこちらもカービィシリーズ Speedrun Wikiの該当ページを見てみてください。本作は、1文字・1スペースごとに一定時間をかけるため、最速の可能性があるのは日本版と韓国版のみです。この2つについて各モードでテキスト比較すると、ボス「バトルウィンドウズ」出てくるモード全て、および「メタナイトの逆襲」は韓国版が有利(文字数が少ない)、「大王の逆襲」は日本版が有利、他はテキストが表示されないので(バグの使用を考慮しなければ)どちらでも変わりません。割とわかりやすい原因があるな~と昔思っていて、それをまとめたのが以下です。

文字の圧縮効率

軽く韓国語の知識を導入します。韓国語はハングルと呼ばれる文字で記述されます。子音と母音が必ず1セット、母音の後にパッチム(받침)と呼ばれる子音が付くことがあります。例えば漢字の「一」は「일」となり、韓国語の「漢字語」も日本語の「漢字」同様1文字で表されます。一方韓国語の「固有語」については、日本語の「訓読み+送り仮名」とある程度比較できないことも無いですが、一概にどちらが有利とは言い難いです。言えることとして、本作で大きな差になる場所は無さそうです。

パッチムが明確に効いてくるのが、英語等の音をハングル・かなで表すとき、つまり外来語です。「ファンファン」は「펀펀」となんと4文字差です。また長音も基本無く、何度も出てくる「カービィ」は「커비」と2文字差です。カタカナの固有名詞の多いカービィシリーズでは結構有利です。

逆に韓国版の方が不利な点もあります。韓国語は文字の区切りとして句読点(正確には,と.)の他、日本語の「文節」にあたる部分でスペースを空けます。「2連主砲」すら「2중 주포」となり1文字分長くなるので、この点では日本版の方が有利になります。

ところで、カービィシリーズ特有のテキスト文化として、漢字を控え平仮名を多用することが多い印象があると思いますが、意外とその影響はないです。まず、「バトルウィンドウズ」はリメイク元の「スーパーデラックス」で「Classic Mac OS」に似せた作りの関係か、全てひらがな・カタカナになっています。一方「メタナイトの逆襲」「大王の逆襲」は普通に漢字を使います。特に前者は「マジなふんいき」を再現するためそれも自然なことかなと思います。後者もそのオマージュですし。

バトルウィンドウズの言語差

前述の通り、「バトルウィンドウズ」は、日本版は全てひらがな・カタカナになっているので、漢字語を使える韓国版が有利……というのが理由の半分です。残りの半分は何と日本版のみに挿入される「インデント」です。

○○が、
   Xポイントあがった!

という表示1回ごとに5文字分損ですので、これだけで30文字分の損です。

「メタナイトの逆襲」の言語差

合計すると15文字分韓国版の方が有利です。この微妙な差については、日本版は毎回最初に『「』を新たに表示するために1文字分の時間を消費することで22文字分の時間を消費していることが韓国版の勝因だったのではないかと思います。

もう少し韓国版が有利な気がしていたんですが、パッチムの無い外来語「メタナイト」が「메타 나이트」と1文字分損だったせいかもしれません。

「大王の逆襲」の言語差

合計すると15文字分日本版の方が有利です。これについては理由ははっきりしていて、日本版に比べて韓国版の方が余計な形容詞がついているからです。「わがしもべ」が「내 충직한 신하(私の忠直な臣下)」、「おのれおのれ、ピンクだまめ!」は「이 괘씸한 핑크색 찐빵 녀석(この忌まわしいピンク色の찐빵やろう)」といった具合です。ピンク「だま」に対応する「찐빵(チンパン)」は蒸しパンらしいです。ちょっと気になる。

まとめ

ということで、誰向けの情報かはわかりませんが、「外来語」、「韓国語のスペース」、「日本版のインデントと『「』」、「韓国版へのローカライズの際の形容詞の追加」が文字数差のポイントになっているようです。

ちなみに、最初は「韓国版/日本版の方が文字数が少ない」に統一しようと思ったんですが、面倒になったので「韓国版が有利」という走者語を躊躇なく使うことになりました。