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『大学入試史上最も難しい伝説の問題をパズルゲームにしたとき、このゲームをクリアせよ。(1998東大)』というゲームの練習がしたい話(練習アプリ付き)

 

この記事は、東京大学ゲーム研究会アドベントカレンダー2025、8日目の記事です。

ゲームの紹介

 こんにちは、TGA22のMMOです。みなさんは、『大学入試史上最も難しい伝説の問題をパズルゲームにしたとき、このゲームをクリアせよ。(1998東大)』というゲームを知っていますか?この『大学入試史上最も難しい伝説の問題をパズルゲームにしたとき、このゲームをクリアせよ。(1998東大)』はunityroomで公開されています。このゲームの内容は、「大学入試史上最も難しい伝説の問題をパズルゲームにしたとき、このゲームをクリアせよ。」という問題を解くゲームです。詳細はやってもらえればわかるので、説明しません。やってください!(紹介とは)

 このゲームを知ったきっかけは本研究会に新しく入ってきた新入生君がこのゲームのタイムアタックのトップランカーで、先日の駒場祭でもこのゲームを取り上げていたからです。自分は駒場祭が終わってから初めてプレイしたのですが、ハマってしまいました。しかし、これのタイムアタックが難しい!

ということで、練習ツールを作りました

 こちらにあります。元のゲームは特に練習モードがないので、実践するのみです。まあ、それで高い点数を取っている人もいっぱいいるのですが、無制限でいじくりたくなってしまいました。

 さて、機能面について説明します。一応スマホとタブレットにも対応したつもりです。最初の画面では、いろいろ配置して遊ぶことができます。ノード数を指定して「問題に挑戦」ボタンを押せば元のゲームのタイムアタックと同じような問題に挑戦できます。問題生成ロジックが同じかわからないけど、どうせランダムでしょう。特に制限時間がないので、じっくり考えることができます。わからない場合は、「諦める」ボタンを押せば、問題生成時にたどったものがコマ送りでアニメーションとしてみることができます。
ショートカットキー元のゲームと同じなので、一応練習としての機能は備えていると思います。

 また、検証モードは、自由にノードを配置して、それが作れるかどうかを検証してくれるモードです。右上のはてなアイコンを押せば説明が出るので、詳しくはそちらを見てください。ノードの数が多すぎると、計算が一向に終わらなくなるので、注意してください。

 仕様として、操作2を行ってノードが重なっても特にエラーは吐きません。タイムアタックには関係ないからです。ただし、ちゃんと作成される問題は必ず作れるようになっているはずです。

おわりに

 製作にかかった時間は4時間くらいです。AIってすごい。原形はすぐにできるのに、スマホ対応とかデザインに不満があって凝りだすと思ったより時間がかかるのは、AIコーディングあるあるでしょうか。ゲームの方は1000点を超えられるように頑張ります。

 

最近やったゲームの話①『Cling To Blindness』

この記事は、東京大学ゲーム研究会アドベントカレンダー2025、7日目の記事です。

はじめに

最近になってSwitch2をようやく入手したものの、時間も体力も足りず碌にプレイできていない、TGA21のヤクガラスです。

みんなが遊び飽きてしまう前に、エアライダーに参戦しておきたいんですがね……。

それはそれとして、記事を書くのは嫌いではないので、息抜きがてら書いていきます。

 

さて、前回の私の番は12/3(火)で、なんだかよく分からない話を延々としていましたね。
ちなみに、この記事実はラボで実験の合間の暇な時間に書いておりまして、普通に周りの席の子に割とオープンになってしまっております。
引かれてないといいですね……。

どうでもいい話はおいておいて、今回はちゃんと「面白いゲーム」の話をします。

 

Switch2が手に入らなかった期間、色々と買い溜めて積んでいるPCゲームがあるんですよ。
積みゲーの中には、少しボリュームがあるRPGやローグライクゲームも無くはないんですが、PCのお手頃ゲームとなると、やっぱりホラーゲームが多くなってくるんですよね。
そんなこんなで、夏はとうに過ぎ去って布団が分厚くなった冬の折、寒い夜に背筋が凍るような思いをしながらプレイに明け暮れております。

 

ということで、本日はそんなホラーゲームの中の一品、『Cling To Blindness』のお話です~

 

『Cling To Blindness』ってどんなゲーム?

(Steamストアページ紹介文)

あなたは、「画面のない、音だけのゲーム」をプレイしたことはありますか?それも、目隠しをして。
『Cling to Blindness』は、音だけでプレイする目隠し必須ホラーゲームです。
プレイ時間は1-1.5時間。ホラーが苦手な方でも遊べるくらいの怖さです。ジャンプスケアもありません。

 

 守らなければいけない3つのルール

一。目隠しは絶対に取らない事。

二。あしおとさんに追いつかれない事。

三。お札を五枚全て回収する事。

 

 

『Cling To Blindness』は、丁度一か月前、今年の11月7日にsteamで公開された、探索型のホラーゲームです。
開発者は、『7 Days to End with you』や『Refind Self: 性格診断ゲーム』などのゲームで知られる、個人開発者のLizardry氏です。
ある時はゲームの中で言語解読をして、またある時は心理テストのようなものを導入してと、特殊なゲームシステムを毎度開発している同氏ですが、今回のゲームはなんと「目隠し必須のホラーゲーム」。

 

相変わらずの斬新なゲームシステムで、公開以前からかなり注目が集まっていましたね。

ルールはざっと書いてありますが、「音を頼りに謎の足音から逃げつつ、風鈴などの音を頼りに探索して進める」というゲームになります。
「3つのルール」が掲載されていますが、プレイ中に一通り分かるようになっているので、事前に覚えておく必要ありません。
説明文に書いてある以上の難しさは無く、マウス操作ができる環境であれば、プレイは可能です。

しいて言うなら、1 ~ 1.5時間ってのは少し難しいかもしれませんね。
ゲームへの慣れや適正にも寄りますが、早くて1.5時間、苦手だったり詰まったりすると2 ~ 2.5時間って感じの印象です。

 

ところで、「ホラーが苦手な方でも遊べる」って書いてありますが、皆さんホラー作品というと、どんなところが怖いですかね?

個人的には①ジャンプスケア、②ビジュアルやグラフィック、③ストーリーあたりで恐怖を感じるタイプなので、確かにこの作品ではホラー感は感じないんですよね。

ただ、ホラーが苦手な配信者の知り合いに「これやってみたら?」って言ったら、「見えないと余計怖いじゃん!!」と返されました……。

なお、画面無し&おどろかし無しでもプレイできない方向けに、迫り来る足音がかわいらしくなる「ペンギンさんモード」があるので、安心できますね。

 

実際のゲームプレイ

さて、ここからは実際に私がプレイした時の様子を元に、お話していきます。
楽しみを損なわないように、ゲームの内容についてはそこそこにしてゲームシステム中心の話にしますが、少なからずネタバレを含みますので、ご覧になる際はご注意ください~

 

目隠し装着

我が家にはアイマスクや目隠しの類は置いてなかったので、取り合えずスポーツタオルを頭に巻いて、その上からヘッドセットを装着する形でプレイしました。
傍から見たら不審者スタイルですね。

音量調節のついでに、配信用の「視覚補助」の設定もありました。
面白そうだったので、普段入り浸っている外部コミュニティのサーバーで配信を開始したんですが、これで後々助けられましたね。
本当に情報0でのプレイは、想定外の所で事故ったり進行しなくなるので……。

 

ちなみに、ゲーム起動してから即座に進行するというわけでもないので、その点はご安心ください。
というか、ちゃんと初めの方で画面や手元を見つつ、音量を調節する方がおすすめです。

それから、机の上は片付けておきましょう。
私はプレイ中に腕で物を倒したり、一度手を放してからマウスを探すのに苦労したりしました。

 

本編スタート!!

さて、プレイを開始し始めてからですが、すぐに異変が。

 

・・・・・・何も起こらない。

 

音が聞こえたと思ったので、ストーリーの開始を待ち構えていたんですが、何も起きません……。

と、そんなところで「これ、クリックしないと進まないんじゃない?」とオーディエンスからの導きが……。

クリックすると無事ストーリー音声が流れ始め、初手から目隠し解除という最悪の展開は回避できました。

 

ストーリーに関しては本当に触りの部分だけですが、自機でもある主人公の「サツキ」が、目隠し状態での「儀式」に挑戦する、という感じです。
プレイヤーと同じく、主人公もまた初手から目隠しなわけですね。

ちなみに、初手のストーリー中は私とオーディエンスは大興奮でしたね。

というのも、プレイし始めてから気づいたんですが、このゲーム声優さんがかなり豪華です。

気になる方は、ストアページをご確認ください~

 

儀式に挑戦

冒頭のストーリーパートが終了したところで、本番のスタートですね。
目隠しで何も見えない中、環境音や主人公の声を頼りに恐る恐る動き始めます。

ちなみに、このゲームの操作は本当に簡単で、マウスを左右に動かすと方向転換、左クリック長押しで直進、右クリック長押しで「集中して音を聴く」ことができます。
後者については後述。

 

ストアページで確認していた通り、風鈴の音を頼りに進んでいきます。

進んでいく毎に、次第に大きくなっていく風鈴の音。
今にも手が触れそうな距離、と思っていたそのころ……

 

「主人公歩くのめっちゃ遅いから、まだまだ先だよ」

 

自機の移動が遅めなのもそうですが、それ以上に音量設定を間違えるという痛恨のミスを犯しましたね。
プレイが半分超えたあたりでメニュー画面に逃げて音量を治しましたが、それまで距離感がバグった状態でプレイしていました……。

皆様は、プレイの際には音量調節はしっかりやりましょう。

 

そんな注意書きはともかく、プレイについての印象は「想像以上に内容が豊かだった」という感じですね。

 

まず、マップがかなりしっかり作られてます。
「視覚情報無し」という前提での逃げホラーということで、当初は単純な四角い部屋を想定していたんですが、プレイの開始地点は屋外。
どこかの村の入り口に放逐されて、目の見えない状態のまま彷徨うと、聞こえてくるのはカエルの鳴き声や川の流れる音、機械から流れる自動の案内音声。

様々な環境音に囲まれながら、足音は避けて、風鈴の音には近づいて、という形で進めていきます。

先ほど「集中して音を聴く」という話をしましたが、右クリックを押すことで、環境音を遮断して足音や風鈴の音だけを聴くこともできます。
一方で、「壁にぶつかっているときの耳鳴り」なども消えてしまって移動に難が出る面もあるので、上手く色んな音を利用する感じになりますね。

 

さて、「壁」の話が出てきましたが、ゲーム内空間の豊かさに付随して、マップは割と複雑に組み込まれています。
とは言っても、迷路のように交差する通路を探索する必要はなく、むしろ逆ですね。

普通に音を辿ると壁に阻まれるので、少し迂回して移動しなければいけない所があるんですよ。

ザックリとした感覚ですが、少し広めの空間がいくつかあって、少し細めの通路が、端の方から伸びている感じですかね?
この壁の影響で、単純に風鈴の音と足音に従っていてもクリアできず、ある程度環境音を拾いながら道を探らないといけません。

なお、配信画面の方では①主人公の位置、②目的地、③あしおとさんの位置のみが画面に表示されており、マップボーダーや壁は一切表示されません。
オーディエンス曰く、「配信見てる方がマップを掴みにくい」とのことです。

 

ちなみに、私はリミナルスペース系のゲームのマッピングがメチャクチャ苦手ですが、実はこの手のゲームは得意です。

ポイントは、「空間を記憶する」よりも「イベントを記憶する」感じですかね?

現実で目的地までのルートを考えるとき、地図を頭に入れてイメージする人と「何番目の通りを右折」とか「この店が見えたら左折」とかのポイントを覚える人に分かれるかと思いますが、私は画像記憶が致命的に苦手なので、断然後者です。

このゲームの場合は、先に挙げたように各所に「マップの目印」のような音が配置されていますし、足場毎に主人公の足音が変わるので、覚えるイベントには事欠きません。

壁の配置と対応付けて、「この音がこっち側から聞こえる道は順路、逆に聞こえたら戻ってる」という形で覚えていくと、正確な空間情報が分からずとも、実用的な範囲でのマッピングは簡単です。

 

とはいえ、「マップが分かれば簡単」というわけではありません。

このゲーム、ルールを見れば一目瞭然ですが、あしおとさんに追いつかれるとゲームオーバーです。

そしてこのあしおとさん、ストーリー進行に合わせて出現するんですが、出現ポイントがまぁまぁ意地悪です。

要は、「風鈴の音を聴いてそちらに向かったら、風鈴側から立ちふさがるように出現する」という感じですね。
結構しっかり追いつかれない限りは大丈夫なので、そこまでゲームオーバーになりやすいゲームではないですが、それでもただでさえ方向感覚を失って迷いやすい環境の中で、順路を辿っていたところで急にチェイスが始まって後退させられると、猶更現在地を見失いやすくなります。(そもそも見てはいませんが……。)

 

ゲーム空間の豊かさや、難易度的な面での「簡単には終わらない」面白さと併せて、ストーリーもちゃんと作られています。

合間で背景を匂わせるような発言が挟まったり、もっと本質的に「考えさせられる」ようなセリフがあったりと、インディースのホラーゲームでは想像できないほどちゃんと作られていました。

 

そんなこんなで、単純に「目が見えないホラーゲーム」というだけにとどまらず、様々な感覚を体験できる、短いながらもきれいなゲームでしたね。

 

そしてエンディングへ

ストーリー的にもプレイ的にも一波乱あり、何とか儀式を終了した先。
様々な謎を残したまま物語は衝撃的な結末を迎え、エンディングっぽい音楽が流れました。

オーディエンスに確認してもらって、エンドロールが流れていることが分かったところで目隠しを外して、久方ぶりにLEDライトを目に浴びました。

 

プレイ時間は1時間30分ほど。
途中で音量調節のため色々といじったり、ストーリーの合間でオーディエンスと盛り上がって遊んだりもしていましたが、ノーデスでもこの時間になったので、ヒトによっては2時間ほどかかるかと思います。

分岐やゲームオーバー時の演出なども一通り確認したところで、ゲーム終了です。

 

もう一段、何か分かるものがあるかと探してみましたが、結局ストーリーの背景については謎が残る感じでしたね。
その辺をプレイヤーに想像させてくるあたりも、このゲームの作者の上手い所かと思います。

 

総評

結論としては、「目隠しでプレイするホラーゲーム」という発想だけで完結せず、そこに合わせた作り込みやこだわりが感じられる、想像以上に濃密なゲームでした。

移動入力とセリフ進行が左クリックで被っていたり、セリフ進行に入ったことが目隠しでは分かりづらかったりと、細々とした不便さはあるものの、目隠し自体は非常に良いアクセントになっており、ストーリーの奥深さも相まって、プレイを通して飽きることは無い構成だったかと思います。

ちなみに、今更ながらゲームタイトルの話ですが、『Cling to Blindness』、直訳すると「盲目性に縋りつく」という感じでしょうか。
ストーリーをクリアしてから考えると、単純なゲーム性以上の意味が籠った、面白いタイトルですね。

ともあれ、斬新なシステムに甘えない確かなゲーム性を備えた作品ですので、ぜひ皆様も、遊んでみてください~

 

それでは、本日はこんなところで~

RTAの運ゲーは収束するのか?

 

この記事は、東京大学ゲーム研究会アドベントカレンダー2025、6日目の記事です。

はじめに

TGA22のClomyです。12/2の記事と連続して書いているので、特に言うことはないです。

さて、自分は『カービィファイターズ2』など、運要素の強いTA(ここではRTAおよびIGTA(ゲーム内タイマーでのタイムアタック)の両方の総称とします)を走っています。その運要素について、「確率は収束する」のような趣旨のコメントをする方が度々見受けられます。ということで今回は「TAにおいて運ゲーは収束するのか?」についてのお話です。

確率論・統計学の用語が時々現れますが、詳しい人に突っ込まれないようにするためなので、気にせず読み飛ばしても大丈夫です。

確率は収束する

まずは、「確率は収束する」について。具体的にどの定理を指しているかはわかりませんが、期待値と分散の話をしたいので、「中心極限定理」について紹介します。一応主張を明記しておきます:

中心極限定理

期待値𝜇と分散𝜎2を持つ独立同分布に従う確率変数列 𝑋1 , 𝑋2 , を与える。

自然数𝑛に対し、 𝑆𝑛 𝑘=1 𝑛 𝑋𝑘 とおくと、以下を満たす:
lim 𝑛 𝑃 ( 𝑆𝑛 𝑛𝜇 𝑛 𝜎 𝛼 ) = 1 2𝜋 𝛼 𝑒 𝑥2 2 𝑑𝑥

(定理の仮定について、期待値と分散の存在はゲームの運要素は大体多項分布的なものであることから満たすでしょう。独立同分布については、真の乱数列じゃないと言われればそうですが、実用上の乱数列でも大きな問題にならないはずです。)

この定理を1から6の目が等確率で出るサイコロの場合で考えます。サイコロを振って6の目が出た回数を数え、多い方が嬉しいとしましょう。

まず6回振ったときを考えます。6の目が「6回中1回」が平均ですが、「6回中2回」出たら少し運がよかったと言えるでしょう。

さて頑張って6万回振ります。このとき6の目が「6万回中1万回」が平均ですが、「6万回中2万回」の場合、運がいいを通り越して細工がされてないか怪しくなってきます。一方「6万回中1万1回」の場合、運がよかったと言えるか、かなり微妙です。

この2つの側面は標語的に「大きな上振れ・下振れは起きづらく」、「小さな上振れ・下振れは頻繁に起きる」、とまとめることができます。

前者が「(平均の)確率は収束する」を指す方です。これは6の目が出た回数の「平均」の振れ幅(の基準となる分散)が、試行回数の平方根に反比例するためです。16から一定「割合」ズレる確率はサイコロを振る度に下がります。

一方後者は「合計の確率は割とゆっくり発散する」とでも呼びましょうか。6の目が出た回数の「合計」の振れ幅が試行回数の平方根に比例するためです。16から一定の「回数」ズレる確率はサイコロを振る度に上がります。6の目の回数の期待値そのものはサイコロを振った回数に比例するため、それに比して「割とゆっくり」です。

ちなみに「6回中2回」と同程度の上振れは「6万回中1万100回」になります。100回というのは案外小さいと思ったかたも多いのではないでしょうか。この印象を「確率は収束する」と呼ぶ気持ちもわからなくはないですが、語弊があるかなと思います。

TAにおける運ゲー

さて、一回の走りで大量の運要素が絡むようなTAを考えます。ここで「運ゲーは収束する」と言えるでしょうか?

実際には、同程度の確率・タイムの振れ幅の運要素だけが存在するわけではないですが、一旦無視してこれまでの考察を適用します。TAは当然タイムを競うわけですから、ここで考えるべきは「合計」の方です。つまり「小さな上振れ・下振れが起きやすい」ということに注目すべきです。運要素によるタイムのブレは、「同じ運要素」が多いほど大きくなります。つまりむしろ「ゆっくり発散」します。

もちろん、記録狙いの場合は上振れを狙うので、「大きな上振れが起きにくい」面も無視されるわけではないですが、単にタイムが詰まれば詰まるほど、記録更新が難しくなるというだけで、普通のことですね。

今度は、タイムの振れ幅が異なる運要素がある場合を考えます。例えば「1秒ロスする要素が600回」、「1分ロスする要素が10回」とします(確率はいずれも等しいとします)。この場合「1分ロス」の方に着目するのは何となく理解してもらえるかと思います。前者の方が回数が多い分「大きな上振れ・下振れ」が起きにくくなるため、後者によるタイムのブレの影響がでやすくなるんですね。

運による影響が大きいことを指す「闇のRTA」と表現があります。これ、単に運要素が多いことを指している場合を効きますが、ちょっと違和感があります。確かに運要素の回数が多いほど、ストレスが断続的にたまるという面はあります。しかし、純粋にタイムを求める場合、運要素による差が大きくなるのは、「1秒ロスする要素が600回」ある方ではなく、「1分ロスする要素が10回」ある方です。後者の方が分単位の差が付く可能性が圧倒的に高いからです、より「闇」なのではないでしょうか。並走で運によるロスは実力でカバー必要があるわけですから。

ついでにお気持ち表明すると、運要素の大きいとTAで実力の部分を軽視されがちな風潮を時々感じています。運ゲーに注目すること自体が悪いことではないと思いますが、走者がちゃんと準備している部分も偶には注目してもいいんじゃないかなと思います。

まとめ

ちなみに自分は走者として、運要素は大嫌いです。実力でカバーできる範囲を超える下振れをされると、馬鹿にされてるみたいで非常に嫌な気持ちになるので。

カードゲームのインフレに伴う変化

 

この記事は、東京大学ゲーム研究会アドベントカレンダー2025、5日目の記事です。

初めに

こんにちは。Mです。本日はカードゲームのインフレに伴う戦術やゲーム性の変化を追っていきたいと思います。ここでは、メタゲームなどの観点はあまり持たず、それぞれの試合のこちらは多大なる個人の偏見が多分に含まれています。苦手な方はご遠慮ください。また、筆者はTCGとは言っていますが、多くのことはBattle Spiritsとデュエル・マスターズでの経験に基づいて多くのカードゲームに言えそうなことを抽象化しているので、予めご了承ください。(インフレを感じられるほど長い期間やっているのがこの二つしかない…)

定義

今回カードゲームのインフレの話をするにあたって、ここでのカードゲームとインフレの定義をします。
1.カードゲームとは
本記事の考察ではいわゆるトレーディングカードゲームを想定しています。要件は主に以下の通りです。
1.プレイヤーはあらかじめデッキを構築する
2.ターン制で進行
3.規定の条件を先に満たした方が勝ち
4.定期的にカードプールの更新がある
4 番の条件は少し異質ですが、本記事ではインフレをするカードゲームに対して考察する必要が
あるのでご了承ください。
2.インフレとは
カードプールの更新に伴って、カードパワー(ここではそのカード1枚がゲームに与える影響力や強さの総合的な指標)が上昇することだとします。

インフレの影響

インフレが起こった場合、カードゲームはどうなるのでしょうか。どのゲームにも共通している要素として考えられるのは出力の上昇、高速化、再現性の向上などだと思います。ここでの出力とはカードでとれるアドバンテージ量の増加です。

戦術の変化

多くのカードゲームにおいて最序盤、創成期はどのような感じでしょうか。私は新しいTCGをできた時からやることはほとんどないので推測が多く含まれてしまうのですが、人から聞いたり記事を読んだ感じでは、リソース差を作ることで自身に有利な状況を作り出し、そのアドバンテージを生かして勝ち切ることが多いように感じました。それではカードゲームにおいて、カードパワーが向上すると起こることは何でしょうか。それは前の影響のところでも少し述べましたが、ゲームの高速化です。多くのインフレの行き着く先としては疑似的な、もしくは直接的に勝利を意味するカードの出現です。
どのゲームにしてもただやられるのを見ているのはつまらないので防御用のカードが作られたりしますが、どうせそのうちその防御札を飛び越えて相手を倒しきるカードがインフレによって作成されます。そのような状況になるとどうなるのか。多くのカードゲームのインフレで言えることだと思うのですが、ゲームをたためるカードが作られる→それに対抗する(この場合は耐える)カードが作成される→それを乗り越えるカードが作成される。防御札を超える以上のフィニッシュ方法はありません。つまりインフレは火力を上げる以外の方向に伸ばすしかなくなります。そう、それは先に出すことです。”先にゲームを終わらせるカードを出した方が勝つ”という簡単な理屈です。じゃあキルターンは速くなるのは納得がいくことです。メタカードなどによりターンをもらうことで自分のフィニッシュを先に叩き込もうとするのはとても合理的な戦略だと思われます。では、そうなった際、ゲーム性はどうなるのでしょう。

ゲーム性の変化

前述の通り、インフレ前、あるいは初期ではアドバンテージ差を作りそれを勝利へと結びつけることが多いです。そしてインフレが進むとゲーム速度が加速する。加速するということは、終了までのターン数が短くなる。つまり、ターンの重みが増加します。例を出します。4ターンで終わるゲームと5ターンで終わるゲームでは最終的に迎えるどちらかが勝利条件を満たすという出力は変わりません。その出力を1だとすると4ターンの場合0.25、5ターンの場合0.20が1ターン当たりの貢献量です。つまり、ゲームの速度が加速するほど1ターンで行うべき勝利への貢献度は上昇します。(もちろんそんなに単純に言い切れるものではないのですが、ここでは簡単のために抽象化しています)もちろん現代のデュエル・マスターズのようにハンデスなどを駆使してゲームを意図的に遅くしてターン数が昔よりも長くなるというようなことはありますが、これらは大体2t,3tで相手の主要パーツを抜いているかのように実質的なキルターンはほかのデッキと大差はない気がしています(もちろん遅くはなっているが)。その結果、先手後手の差が大きくなり、運ゲーというような感情を抱く機会が増えてしまいます。ほかにもターン数が少なくなると単純に公開領域が減ることになり、いわゆる事故のような状況に陥ることが多くなり、これもまた運ゲーだという感想に結びついてしまいます(マリガンがないならなおさら)。

クソゲー?

では、インフレしたカードゲームはクソゲーなのでしょうか。私は必ずしもそうではないと思います。インフレして、ゲームレンジが短くなってしまい、先手後手の差が大きくなってもカード開発者たちはよりプレイヤーが楽しめるようなカードデザインをしていますので、ただ出ただけで勝ち!みたいなカードは規制されやすく、また、短いターンの中で密度の濃いやり取りができるようなデザインをすることによって、ゲームとして楽しめる条件は満たしていると感じています(もちろんやらかしてしまった時には、ターン数が短いことで目も当てられないことになった
りしがちですが)。また、今ではカード1枚1枚のゲームに対する影響力が大きいため、リソースを意識した立ち回りは大切な要素です。インフレが進んだところで、ゲームの根本であるリソース管理は変わらず重要であったということです。

まとめ

インフレする中でカードゲームは運ゲーが加速してしまうが、それでもリソースという概念と向き合うことは依然として重要です。それが健在である限り、カードゲームはゲーム足り得ると考えられます。

反射神経

 

この記事は、東京大学ゲーム研究会アドベントカレンダー2025、4日目の記事です。


こんにちは。TGA23のたもです。

 

みなさんは反射神経をご存じでしょうか。

ご存じですね。反射神経をご存じでない方はあまりいないと思います。

 

では、反射神経というゲームはどうでしょうか。

unityroomで遊べるゲームなのですが、長いことトップページに君臨し続けているので見たことがある人もいるかもしれません。

 

端的に説明すると、2つのボールを操作して、流れてくる板を避け続けるゲームです。左右のボールにはそれぞれ1つのキーが対応していて、キーを押すと外側に、離すと内側に移動するだけのシンプルなゲーム。板を超えるたびにスコアが増えるだけの、とてもシンプルなゲーム。

 

 

……簡単そうですよね。

 

 

やってみれば分かりますが、めちゃくちゃ難しいです。

初めのうちは1桁スコアは当たり前、配置がよくてもスコア20程度が関の山でしょう。

 

しかし、謎の中毒性がある。

ジャンルとしては『マウスクリック連打速度テスト』とか『エイム能力テスト』に近い単発系のゲームなのに、他にはない魅力がある。

 

そうして続けていると、突然ベストスコアが50に伸びる。そこで感覚をつかみ、30程度なら苦も無く到達できるようになる。

 

「反射神経」なんて一切使わないのに、このゲームにはこのゲームでしか使わない能力が確かに存在して、それ専用の回路が脳の中で組みあがっていく。

 

やがてスコアは100に到達し、板の速度が上がり、それでもスコアは伸び続ける。スコア200で板の速度が最大になるが、その頃にはもはや板は止まって見えている。

 

回路が「完成」し、雷でも落ちなければミスることはない、そんな自信がつく。実際、スコアは際限なく伸び続け、あとは集中力と目の渇き、そして突発的な痒みとの戦いになる。

 

 

そんなゲームです。

 

 

自分のベストスコアは1300くらいだったのですが、この記事を執筆するにあたり久々にプレイしたら1700まで伸びました。また、unityroomのコメント欄で片手プレイの存在を知ったので挑戦したところ、かなり苦戦しましたが450程度まで到達しました。久々に回路を作る感覚を味わえて楽しかったです。

 

みなさんもぜひ挑戦してみてください。


余談ですが、自分の場合、片手プレイの練習をしていたら使っていない指の組み合わせも勝手に上達していたんですよ。普段左の玉を操作している指で右の玉を操作してもそれなりに上手くいく。でも、反対側の手だと全くできない。

 

人間の脳は不思議ですね。

老人談義:最近のゲームの話

 

この記事は、東京大学ゲーム研究会アドベントカレンダー2025、3日目の記事です。

はじめに

TGAアドベントカレンダー2025、3日目はTGA21、ヤクガラスがお相手致します。

 

今年もこの季節がやってまいりましたね。
当方、昨年・一昨年と連続で投稿数トップの5本を飾っている暇人ですが、今年は私生活とラボのタスクが溜まりに溜まっているので、記録維持については難しいかもしれませんね……。
まぁ、書き物は苦ではないので、寧ろ現実逃避のために書くかもしれませんが。

 

そんなこんなで、まだまだ未熟な身の上ですが、そんな私も現在5年目。TGAの現役会員の中では年長枠になり、ゲートボール場に片足突っ込んでいるところでございます。

過去2年は若さと熱意に任せて好きなゲームのレビューを書き連ねていましたが、そろそろ「昔はこんなことがあってなー」とか「最近のゲームはー」とか、老人っぽいことを話し始めて先輩風を吹かせてみようかなーと思うわけでございます。

まぁ、ぶっちゃけ「別に面白ければ何でもいいんじゃね」という所に落ち着きますし、多分次回からまたゲーム紹介に戻るので、それこそ「老人の小言」とでも思ってお楽しみいただければと思います。

 

ということで、今日は「最近のゲームのお話」です~

 

ゲームの面白さ

さて、いきなりかなり難しい話ですね。

 

結論から言うと、「人による」という所になってしまいます。
というのも、少なくとも「面白いと思うゲーム」は人によって変わります。
かくいう私も、対NPCアクションや高難易度ストラテジーが好みで、ノベルゲームが苦手です。
ただ、これは「どういうゲームに興味があるか」という話であって、原理的な「ゲームの面白さ」とは若干ずれますね。

 

個人的な解釈や価値基準については様々あるかと思いますが、より普遍的に「ゲームが面白くなる」原理的な背景については、脳科学的には「ドーパミンレベルが上がって報酬系が活発になるから」と説明されます。

さらに遡って、何故報酬系が活発化するのかを突き詰めていくと、多くの文献では「制御感」とか「支配感」という所に行きつきます。
「経験のレプリカ」として構築されたゲーム空間の中での、複雑な処理に対しての操作の簡便さ、行動から結果までのフィードバックの早さ、セーブやリトライによる修正可能性などが、「特定の目的のため行動を計画して実行する」という報酬系の本質的な機能を強烈に刺激することが、「ゲームの面白さ」の本質になるわけです。

 

 

……よく分からないですね。もう少し噛み砕きましょう。

 

動作の簡便性

例えば、マリオがジャンプするたびにプレイヤーが全力でジャンプする必要があったら、それはそれで面白いですが、ゲームとしてはただただ辛いですよね。
あるいは、スマブラの緊急回避で後転する動作がありますが、人によってはかなり苦労する動作かと思います。

動作の一つ一つに苦労が生じない点は、プレイヤーが取れる選択肢の中で発生するコストを大幅に低下させます。

 

即効性

モンハンではダメージを「回復薬」で回復することができますが、回復薬を飲んでから1週間かけて徐々に体力が戻る仕様だったら、嫌になっちゃいますよね。
内容にも寄りますが、多くのゲームではプレイヤーの行動に対する結果は、現実よりも大幅に短縮して発生します。
数週間後に恩恵を受けられるタスクよりも、すぐに結果が返ってくるタスクの方が、モチベーションが上がりやすいことが分かっています。

 

だから、国を救うためには「選挙に行く」よりも「魔王を倒す」方がモチベーションが上がりますし、「病気を治すために1か月間薬を飲み続ける」よりも「回復薬を飲む」方が実行したくなるんです。(私は回復薬を渋って乙る民ですが……。)

 

修正可能性

ボスに挑戦するために5時間かけたのに、負けてしまって一からやり直しになったら、私は「絶対にボコボコにしてやる」と硬く誓う人間ですが、普通は萎えて、そのままモチベーションをなくしてしまうかと思うんですね。
これって日常の試験とかでも同じで、失敗した後の再挑戦が数か月先になると、「次は頑張ろう」よりも「取り返しがつかないことをしてしまった」という感覚が勝る場合が多いんです。
ただ、幸運なことに大抵のゲームには「セーブ」と「ロード」が設定されていて、極論データは作り直せばあらゆる現象が「取り返しがつく」ものなんです。
タスクの実行とフィードバックを経て、「次回」をすぐに試せるゲームの原理は、モチベーション維持に極めて重要になります。

 

ゲームプレイが快適になる背景には、このように①操作が簡便で制御が容易であること、②実行後に結果がすぐに帰ってくること、③モチベーションが失われる「間」が無いこと、などが存在しています。
ここに、ゲームの「目新しさ」や「チャレンジ感」、interestingではなくfunnyな方の「面白さ」などの個性が加わってくることで、昨今のゲームは日夜成長を遂げているわけです。

 

見方を変えれば、前者の項目が満たされていれば、脳が感じるところの「ゲームとしての面白さ」は担保されていると言えます。
その上で、ゲームシステムなど内容の面で「ゲームの楽しみ方」が提示されていて、ここが個人の好みに合えば「ゲームが楽しい」と感じられるわけです。

逆に、原理的な面白さを欠いた「楽しみようがない要素」を持つゲームこそ「クソゲー」であるというのが、私の持論です。

 

最近のゲーム

当方2002年生まれで、当時丁度「ゲーム脳」とかいう似非科学が流行っていた時期なんですが、当時から比較すると、ゲームに対しての認識はかなり改善されている印象です。
それもあってか、ゲーム産業はかなり拡大&多様化していますよね。
私自身、古き良きタイトルから新出の不可思議な作品まで色々と遊びつつ、常々実感しております。

 

アップデートされている点を挙げればきりがないですが、方向性の大きなくくりとして、①リアル化、②多機能化、③オンライン化に関しては、多くのゲームジャンルに関わるポイントかと思います。

これらについて、一消費者の分際ではありますが、利点と欠点を分析していきます。

 

リアル化

最近のゲーム、本当にすごいですよね……。
ゲームエンジンが進化して、グラフィックもサウンドも何もかも滑らかになっています。その最たる例が「オープンワールド化」で、マップ間の移動やロードを挟まない仕組みは、めちゃくちゃ綺麗です。

 

利点は言わずもがな、臨場感があることですね。
大事な戦闘やイベントの合間にロードが挟まったり、大事な会話イベントの最中にキャラクターが無表情で突っ立っていたりという、白けてしまうような「ゲームっぽさ」が排除されて、どこまでもゲームプレイに没頭できるようになります。
ロードの省略は「制御感」の向上につながりますし、プレイの中の自然さは、ゲームを「経験の集合体」として脳に強く印象付けるので、いずれも「ゲームの本質的な面白さ」に貢献しています。

 

反面、昨今はゲーム体験の中での「リアルっぽさ」を追求する動きもあります。
ややこしい話ですが、「ゲームの設計がリアルになる」か、「ゲームの内容がリアルになる」か、という違いがあります。
後者の「リアル」については、物によっては寧ろ、ゲームの面白さを損なってしまいます。

 

例えば、モンハンでプレイヤーが操作するハンターは高所から落下してもダメージを受けず、「モンスターなハンター」なんて言われたりしますが、落下ダメージまでリアルに再現されると困りますよね……。
あるいは、あつ森で植えた木が数年経たないと成長しないなら、多分誰も植えません。

前述したとおり、ゲームは「リアルな経験と比較して」制御感や支配感があるために面白く、それを損ねる「リアル」は全てノイズになります。
極論、全てリアルな体験にしたければ、現実で実際に体験すれば良いわけで……。

 

身も蓋もない話ですが、ゲームを面白くするためには「面白い要素を増やす」よりも「面白くない要素を削る」方が簡単で、かつ重要になってきます。
どれだけ楽しい状態でも、水を差す要素が一つあるだけで、ずっと引っかかってしまいますからね。

その側面では、プレイヤーが不便になるリアルさは、「それを楽しみとして取り入れているゲーム」でない限りは入れるべきではないというのが、個人的な所見です。
特に、過去作品でゲーム性をプレイヤーが把握して「楽しみ方が確立されたタイトル」に対して、後継作品でリアル感を付与する行為は、地雷を踏みやすい印象です。

 

多機能化

これはかなりシンプルですが、昔のゲームと比較すると、どのゲームもメチャクチャ機能が多いですよね。

キャラメイクやビルドに幅があったり、アクションが無数にあったり、ゲームのストーリー自体がプレイングで分岐したりと、あらゆる面で「楽しみ方」が増えている印象を受けます。

 

一般に、ゲーム内で「できること」が増えると、ゲームの「制御感」が補完されることで面白さが加速します。

例えば、地上移動限定だったゲームにジャンプが追加されるだけでも、高い場所を探索したり、攻撃をジャンプで回避したりと、ゲーム体験は大きく変わります。
技が増えれば取れる選択が広がり、ストーリーやルートが分岐すれば、各々が自由な楽しみ方を味わうことができるようになります。

 

一方で、自由度の高さは面白さを損なう要因にもなり得ます。
自由度の高さや選択肢の広さが行き過ぎると、プレイングや方針が定まらず「何をしていいのか分からない」という面での非制御感が生じます。

 

もう一点、当然ながら人気タイトルの新作で「楽しみ方が減る」ことも、面白さが低下する要因になります。
過去作ではもっと面白いアクションやシステムがあったのに、今作では丸々削除されてしまった、なんて場面が割と多いです。
元からない場合と比較して、過去の快適感を味わった上で削除される方が、ショックは大きいんですよ……。

「新作の機能拡張」という面で特徴的だと思ったのが、ストⅥのモダン操作設定ですね。
一応、システムとしてはストⅣのアプリ版の「簡単必殺技」の時点で存在していましたが、これがメイン作品の方にも取り込まれた感じかと思います。
私自身、アプリ版でこのシステムに助けられて格ゲーの面白さを知れた民ですので、「初心者向け機能」として楽しみ方が増えるものと考えていましたが、どうも「難しい操作を練習しようとした人がオンライン環境でボコボコにされる」という事態があまり好ましく思われていないようですね……。
確かに、格ゲーマーが壮絶な読み合いの隙間を縫って複雑なコマンド入力でコンボを成功させる様子は憧れを感じますし、それを目指して練習し始めた最中、コンボがつながらず「モダンの方が楽で強い」と言われてしまうと、辛いものがありますね。

一応、コマンドの制限やダメージ低下の都合でクラシックの方が理論上は強いようですが、それでも「コマンド入力に苦戦しながらも対戦して強くなる」という楽しみ方が損なわれるのは、簡単な評価では片づけられない問題です。

 

オンライン化

IT技術の展開・導入のペースも早いようで、最近では身近なコンシューマーゲームまで全部「オンライン化」してますよね。

データがオンラインで取得できたり、マルチプレイが容易になる面ではゲームプレイが快適になっているように見えますが、例のごとく「面白さ」を考えた時に、「オンラインに特化したゲームシステム」は、当然ながら制御感を大幅に損ねてしまいます……。

 

先ほど、ゲームの「ゲームっぽさ」が消えると没頭感が増すという話をしましたが、逆に度重なるロードやラグは、当然ながらゲームの快適さを損ないます。
最近よくあるのが「サービス開始/アプデ直後に人が多くてまともにプレイできない」という状態で、ゲーム体験としては最悪ですよね……。

まぁ、そのために大規模サーバーを用意しておいて、開始から時間がたって人が減った結果行き場を失ったサーバーだけが残る、という事態を考えると、戦略的には「初手で不便をかける」のを許容する方が正解なんですけどね。
そこで、「オフラインプレイ」のオプションがあればまだ楽しみようもあるんですが、最近はマルチプレイを標準化しようとした結果、ソロ・マルチ問わず完全オンライン必須のゲームも多いですからね……。

当方、未だに最近のゲームのマルチ推し姿勢が理解できないソロゲーマーです……。
TGAの人間はマルチ誘わなくてもゲーム買ってくれますし、それ以外でマルチに誘う知り合いもいないので、売り上げにはあんまり貢献できないんですよね。

 

ちなみに、マルチプレイ化そのものに関しては、五分五分という印象です。

極論、マルチプレイする相手はたいていの場合は非制御感の塊ですが、初心者が上級者に助けられて感謝する場面は往々にしてあるかと思います。
同時に、味方のプレイと噛み合わず罵倒が飛び出すのもまた、「制御感」というゲームの本質を考えれば至極真っ当な行動ですし、それを様式美として受け入れていける寛大なゲームであれば、問題はありません。

 

問題は、そんな中で「マナーを大切に」とか提言するゲームの方ですかね。
基本的に、マルチ前提のゲームで「嫌なら出ていけ」とプレイヤーを選別・排斥し始めたらおしまいなので……。

 

長々と書きましたが……

最近のゲームは「新しさ」が開発のベースに置かれている中でも、何となく「価値観の押しつけ」が多くなっているように感じたので、その感覚を共有してみたくなった次第でございます。

 

今回はゲームの面白さの本質を「制御感」という言葉でまとめつつ、その辺を色々と考えていきました。
分析を抜きにした私個人の感覚としても、新しいものばかりでプレイを縛られるくらいなら、過去のゲームのシステムをそのままグレードアップして再現したり、ちょっとした追加要素を入れる程度にしてもらう方が嬉しいです。

そもそも、別に過去のゲーム作品にそこまで不満は無いので……。
いわゆる「リメイク作品」が色々と話題にあがるのを見るに、共感してくれる人は多いと思います。

 

それはそれとして、新しいものが次々と追加されている面については、飽きることが無くて面白いですけどね。
私も来年は色々とぶっ通しで忙しくなる想定ですが、何とか時間を見つけて新作ゲームを漁っていく所存です。

 

ということで、老人がただただお気持ち表明するだけの駄文になってしまいましたが、明日からはまた楽しい感じの記事になるはずなので、乞うご期待です!!

それでも、本日はこんなところで~

 

 

 

ウルデラ言語差小ネタ

 

この記事は、東京大学ゲーム研究会アドベントカレンダー2025、2日目の記事です。

はじめに

TGA22のClomyです。最初の方は軽い記事がいいかなと思ったんですが、新作ゲームに手を出す数と、新たなRTAに手を出す数があまり変わらない人間がいいネタが思いつかなかったので、ニッチな小ネタでお茶を濁そうかと思います。

ということで、自分がRTAをよくやっている『星のカービィ ウルトラスーパーデラックス』のテキストの言語差について紹介します。しかも、タイムに関わる部分だけ!

ゲーム紹介

星のカービィ ウルトラスーパーデラックス』は、2008年に発売されたニンテンドーDS用アクションゲームで、1996年発売の『星のカービィ スーパーデラックス』のリメイク版です。カービィおなじみのコピー能力はもちろん、様々なゲームモードのオムニバス形式の作品です。(会誌第126号(2025五月祭会誌)より。懐かしいね。)

言語差比較

実は日本版と、非日本版でそもそもゲームの仕様の違いが多少あります。特に日本版は北米版の次に発売されているのですが、なぜか日本版の方がバグが多かったりします。その辺の話が気になる方はカービィシリーズ Speedrun Wikiの該当ページを見てみてください。

先述の通り、今回はあくまでRTA/IGTAに影響する「テキストの量による表示時間の差」にのみ注目します。具体的なテキスト比較が気になる方はこちらもカービィシリーズ Speedrun Wikiの該当ページを見てみてください。本作は、1文字・1スペースごとに一定時間をかけるため、最速の可能性があるのは日本版と韓国版のみです。この2つについて各モードでテキスト比較すると、ボス「バトルウィンドウズ」出てくるモード全て、および「メタナイトの逆襲」は韓国版が有利(文字数が少ない)、「大王の逆襲」は日本版が有利、他はテキストが表示されないので(バグの使用を考慮しなければ)どちらでも変わりません。割とわかりやすい原因があるな~と昔思っていて、それをまとめたのが以下です。

文字の圧縮効率

軽く韓国語の知識を導入します。韓国語はハングルと呼ばれる文字で記述されます。子音と母音が必ず1セット、母音の後にパッチム(받침)と呼ばれる子音が付くことがあります。例えば漢字の「一」は「일」となり、韓国語の「漢字語」も日本語の「漢字」同様1文字で表されます。一方韓国語の「固有語」については、日本語の「訓読み+送り仮名」とある程度比較できないことも無いですが、一概にどちらが有利とは言い難いです。言えることとして、本作で大きな差になる場所は無さそうです。

パッチムが明確に効いてくるのが、英語等の音をハングル・かなで表すとき、つまり外来語です。「ファンファン」は「펀펀」となんと4文字差です。また長音も基本無く、何度も出てくる「カービィ」は「커비」と2文字差です。カタカナの固有名詞の多いカービィシリーズでは結構有利です。

逆に韓国版の方が不利な点もあります。韓国語は文字の区切りとして句読点(正確には,と.)の他、日本語の「文節」にあたる部分でスペースを空けます。「2連主砲」すら「2중 주포」となり1文字分長くなるので、この点では日本版の方が有利になります。

ところで、カービィシリーズ特有のテキスト文化として、漢字を控え平仮名を多用することが多い印象があると思いますが、意外とその影響はないです。まず、「バトルウィンドウズ」はリメイク元の「スーパーデラックス」で「Classic Mac OS」に似せた作りの関係か、全てひらがな・カタカナになっています。一方「メタナイトの逆襲」「大王の逆襲」は普通に漢字を使います。特に前者は「マジなふんいき」を再現するためそれも自然なことかなと思います。後者もそのオマージュですし。

バトルウィンドウズの言語差

前述の通り、「バトルウィンドウズ」は、日本版は全てひらがな・カタカナになっているので、漢字語を使える韓国版が有利……というのが理由の半分です。残りの半分は何と日本版のみに挿入される「インデント」です。

○○が、
   Xポイントあがった!

という表示1回ごとに5文字分損ですので、これだけで30文字分の損です。

「メタナイトの逆襲」の言語差

合計すると15文字分韓国版の方が有利です。この微妙な差については、日本版は毎回最初に『「』を新たに表示するために1文字分の時間を消費することで22文字分の時間を消費していることが韓国版の勝因だったのではないかと思います。

もう少し韓国版が有利な気がしていたんですが、パッチムの無い外来語「メタナイト」が「메타 나이트」と1文字分損だったせいかもしれません。

「大王の逆襲」の言語差

合計すると15文字分日本版の方が有利です。これについては理由ははっきりしていて、日本版に比べて韓国版の方が余計な形容詞がついているからです。「わがしもべ」が「내 충직한 신하(私の忠直な臣下)」、「おのれおのれ、ピンクだまめ!」は「이 괘씸한 핑크색 찐빵 녀석(この忌まわしいピンク色の찐빵やろう)」といった具合です。ピンク「だま」に対応する「찐빵(チンパン)」は蒸しパンらしいです。ちょっと気になる。

まとめ

ということで、誰向けの情報かはわかりませんが、「外来語」、「韓国語のスペース」、「日本版のインデントと『「』」、「韓国版へのローカライズの際の形容詞の追加」が文字数差のポイントになっているようです。

ちなみに、最初は「韓国版/日本版の方が文字数が少ない」に統一しようと思ったんですが、面倒になったので「韓国版が有利」という走者語を躊躇なく使うことになりました。

2025年の振り返り

 

この記事は、東京大学ゲーム研究会アドベントカレンダー2025、1日目の記事です。

はじめに

 2025年度TGA代表のlinkiです。 今年もアドカレをやることになりました。初日は代表が書くらしいので、自分の視点から覚えていることを振り返りたいと思います。

3月

代表就任

 代表になりました。

新歓の準備

 無事にサークル代表者会議に出ました。慣例の地獄のビラ詰めもたもさんの協力で終わってめでたしめでたし

4月

新歓

 新歓がほかのサークルと被って新入生が少なかったです。オンライン新歓もありましたが、なかなか去年のようにできませんでした。いろいろ改善の余地あるでしょうかね

5月

五月祭

 副代表のMさんが頑張りました。場所もよくてたくさんの人が来て、企画の並走がやや大変のと、ある企画で会員が寝坊したこと以外無事に終わりました。

8月

駒場祭責任者会議

 夏休みだし帰省の時期は当然オンラインもあると思って前日見たらオフラインだけで、当日も委員会からの電話は出れずMさんが対応しました。Mに感謝しています。

夏コミ

 3回目(?)の売り子をやりました。OTBさんとwattaさんの協力で結構売れて、楽しいコミケでした。

9月

夏休み企画

 Mさんが提案した夏休み企画です。たくさんのゲームをみんなで遊びました。

11月

駒場祭

 紅白戦とスマブラ対戦企画が三回も続きました。安全に終わりました。紅組は勝利おめでとうございます!

12月

アドベントカレンダー

 やるかどうかの議論を忘れて、開催することをデフォルトとして始めました。完走できるといいね

冬コミ

 昨日が締め切りですが、自分はレポートが多くては締め切りを守れないことが判明しました。12/30(火) 、東ト23aでお会いできるのを楽しみにしております。

終わりに

 振り返ってみたら自分の事務能力がカスなことは自明なことであり、無事に代表としての役割を果たしたのは怪しいかもしれません。それにもかかわらず、ゲー研の活動は来年以降も続きます。来年は会員がもっと増えて、みんなで元気にゲームを楽しめることを心より願っております