最近やったゲームの話:『No Players Online』

この記事は、東京大学ゲーム研究会アドベントカレンダー2025、16日目の記事です。

はじめに

本日で4本目、暫定単独トップを独走中のTGA21、ヤクガラスです。

毎度「時間が無い」だのなんだの書いていますが、何だかんだで今年も色々と書いてますね。
前々から一部の人(主にTGA会員)には話していますが、当方ゲームをプレイするのと同じだけ、ゲームの情報を調べて研究したり、ゲームの話をするのが好きなタイプでございます。

学園祭でRTAを走る機会もそこそこありますが、個人的には走るよりも人が走る様子を見ながらベラベラ喋ってる方が、実は性に合っています。

まぁ、走る方も走る方で楽しいので良いんですがね。

 

一番の問題は、不思議なことにどちらも好きでやっていながら中々上達しないところですかね……。
本質がかなり大雑把な人間なので、フレーム単位で固定したゲームプレイとか綺麗な文章作りができないんですよ……。

 

それはそれとして、今回はちゃんと「最近プレイしたゲーム」の話です。
とはいっても、これまたかなり前に短編作品として話題になったゲームの完全版という形なので、まるっきり新規という訳でもないんですけどね。

公開以来話題に上がっていたホラーゲームで、何となく雰囲気が良さそうだったのでプレイしてみたんですが、「ホラーゲーム」としてというより、「ゲーム」として非常に面白い作品でした。

執筆時現在プレイ時間3時間で、まだまだ全貌が把握しきれていないプレイ途中の状態ですが、全てを理解するにはそこそこ時間がかかりそうなので、今のうちに記事にしてしまおうと思った次第でございます。

 

ということで、本日は『No Players Online』のお話です~

 

 

『No Players Online』ってどんなゲーム?

『No Players Online』は、今年の11月にゲームスタジオ「Beeswax Games」より公開された、PC向けの短編ホラーゲームです。
オリジナル版は2019年時点で公開されたものですが、これが大幅に更新された完成版にあたります。

 

内容としては、「古いPCに保管されている不可思議なFPSゲームを発見し、併せて保管されているプログラムやドキュメントを紐解いてその謎を解き明かす」といったものになります。

ゲーム開始後は、プレイヤーは「ゲーム内で」パソコン画面を操作して探索していきます。
ゲーム内で表示される日付は1900年代後半、「インターネット」という概念が現実化してからさほど立っていないような時期のPC画面はかなり年季を感じるレトロなもので、見つかるゲームもまた、信頼感のあるマインスイーパーやシンプルな設計のドット絵のゲームです。

 

そんな中で、ゲーム内の流れのままにプレイすることになるのは、少しグラフィックがきれいな3DのFPSゲーム。
いわゆる「旗取りゲーム」という類のものですが、名前も知られていなさそうなゲームのα版(いわゆるβテストのさらに前の段階)な上、突発的に立ち上がった野良部屋に人が集まるわけもなく、一人で黙々と遊んでいると、何やら異変が……。

突如不安定になるゲームの挙動やグラフィックに翻弄されるがままに進めていくと、いつの間にやら再起動したかと思えば、立ち上がったのは冒頭とは違った明らかに異常なログイン画面……。

 

「……は?」
と言いたくなるような急展開のままに、プレイヤーは宛ての無い謎解きへと放流されることとなります。

体感としては、第四境界様作の「かがみの特殊少年更生施設」を思い出すような感じですね。
明らかな異常性とか違和感があるけど、自分から探りにいかないことには何も起きない、そんなむず痒い感覚です。
あからさまなヒントや誘導の類が無く、「とにかく色々試してみる」ことで何とか自ら道を切り開いていくという難易度の高いゲーム性ですが、当たりを引いた時の快感が凄まじく、意地でもカンニングしたくなくなってしまう、そんなゲームですね。

とはいえ、多分一切カンニングしないで全て解ききるのはかなり難しいので、私は「探すのが辛くなってきたら、少しずつ調べながら見て言っても良いんじゃないかな」と思うタイプです。
私自身は時間さえあればいつまででも探し続けていられますが、それでもクリアした上で気づけなかったことなんかも多いですし、そのあたりを勉強しつつ次回に生かしていきたいので……。

 

話がそれましたが、そんなこんなで、「パソコン画面を操作するゲーム」という内容も相まって、自由度と難易度がかなり高いゲーム性となっています。

 

が、今回記事の題材としてこのゲームを挙げた理由は、そこではありません。

 

このゲームの特徴:「ゲーム」という概念への理解と解釈

このゲームは、「インディースのホラーゲーム」としては類を見ないレベルで奥が深い内容になっているというのが、プレイ時間3時間でも読み取れます。
それも、「ホラーっぽい雰囲気が良く出ている世界観」とか、「恐怖や絶望が感じられるストーリー」とかそういった面ではなく、もっと根本的に、ゲームという概念についての理解度と解釈の拡張性がこの上なく広い、という方向です。

 

この点について、①ストーリー背景と②ゲームの進行の2点から考えていきましょうか。
都合上、どうしてもネタバレが一部含まれてしまうので、ご了承ください。
なお、謎解きの解答については基本的には触れないので、その点はご安心ください。

 

ゲーム背景

先ほど提示した通り、このゲームの背景として描かれる年代は1900年代後半です。
単純なロジックのデジタルボードゲームや2Dアクションはそれなりに開拓されているものの、「3DCG」についてはまだまだ発展途上という時期ですね。

もう少し具体的に書いていくと、大体こんな感じです↓

  • 1960年代
    大規模なコンピュータのみの時代。
    「ゲーム機器」というほど特化したものは無く、PCゲームにしても研究の中で実験的に作る程度のレベル。
    3DCGは数学的な研究の段階。

  • 1970年代
    この辺りで始めて「個人用のコンピュータ」が登場。
    テキストアドベンチャー的なゲームが個人で小規模で開発されて、いわゆる「電子掲示板」が運用できるようになったことでオンラインコミュニティが発足。
    グラフィックを描画できるスペックはあんまり無いはず。

  • 1980年代
    ファミコンが登場する頃。
    カラーグラフィックも整って、今でいう「PCゲーム」の形になる。
    3Dグラフィックも実用化されるが、個人がゲーム開発で取り入れられるものではなく、映画業界など大規模産業で利用される程度。
    オンラインコミュニティも発達してくる。

  • 1990年代
    スーパーファミコン以降。
    疑似的なリアルタイム3Dゲームが実用化。
    同人PCゲーム開発も発展して、小規模なオンラインコミュニティがかなり増えてきたころ。

 

これを踏まえてゲーム内の世界観を除いてみると、PCを閲覧しているのが1990年代中盤で「オンラインである程度問題なく交流できる」「2Dの小規模PCゲームが個人で開発されている」という点はマッチしているかと思います。
一方で各種ドキュメントの日付はもう少し前で、「研究者としてデータ処理エンジンを開発」しているような記述のほか、「3Dグラフィックの実現」が如何に難しいかという話が展開されている点も踏まえると、これまた「ゲームの基盤になる技術が研究レベルで展開されていた時代」という点で史実と合致しています。

 

無論、私自身あまり「ゲームの歴史」について詳しい方ではありませんが、ざっと見た限りでもかなり細かく時代背景を組み込んだストーリーになっており、「ゲーム史」への深い造形とこだわりが感じられます。

こういった背景を知った上で、「3D旗取りゲーム開発の謎」というストーリーを見ていくと、より一層ゲームに入り込めて楽しいですね。

 

ゲーム進行

「ストーリー」という部分と区別しづらいところですが、このゲームのストーリーを進める中で重要になってくるのが、「ゲームの魂」という部分です。

私は基本的に原語とか翻訳がきれいな状態でのプレイが好みな都合で、今回は英語でプレイしていますが、ドキュメントでこの概念が出てきた時には一瞬自分自身の誤訳を疑いました。

もう少し詳しく書きますと、要は「ゲームの中の色んな概念」をまとめて「魂」としていて、これが近いゲーム同志を組み合わせることで「ゲームの各属性を組み合わせた新規のゲームが誕生」する、という感じですね。
さらに、その魂を「石」として安定化させることで、任意でゲームに組み込むことができる、というお話です。

この時点でも、中々にすごい発想ですよね。

最近のゲームでも、複数のジャンルやゲーム性を上手く組み合わせて斬新なゲームを作るという試みは良く見ますが、ここまで根源的な抽象概念に還元した上で「組み合わせる」という発想を、ゲームに対して適用するのは、中々にぶっ飛んでいると思います。

 

さらにさらに、属性を重ね合わせることで「多次元空間をゲーム内で実現できる」というところまで発想を飛ばしているんです。
私自身、趣味でTRPGのシナリオを考えたり、時折「タイムマシン」的な話題がネット記事等々で目に入るたびにそんな感じの概念に浸ることがありますが、「魂を重ね合わせることで3DCGを実現した」という時代背景を取り込んだうえでのストーリーにまで押し上げているところは、感服の一言です。

 

ということで、ゲームそのものへの「現実的な理解」と「概念・属性の抽出と拡張」という2つの側面が、このゲームを単なるホラーゲームに留めない、特筆すべきポイントかと思います。

 

おわりに

再三申し上げていますが、私はまだこのゲームの全貌は把握しきれていませんし、それを踏まえた上で尚、このゲームは非常に興味深い、面白いゲームと断言できます。

ちなみに、私みたいな「ゲーム中毒者」的な視点でなくとも、もっと純粋な視点でもストーリーが(現在私が確認している範囲だけでも)非常に綺麗に展開されており、この手のゲームへの慣れや根気が必要な点を除けば、どんな方でもかなり楽しめるゲームじゃないかと思います。

 

逆に言えば、やはり難易度や根気の必要なゲーム性が少しネックになってくるところですが、幸い現在攻略情報やyoutubeのプレイ動画も充実していそうな状況です。
攻略情報を見ながら少しずつ読み解いていったり、あるいは配信者のプレイの様子を一緒になってみてみるだけでも、面白いんじゃないでしょうか。
(私はプレイ中のため内容を確認できていませんが……。)

 

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a game is only a window is only……

一体、このゲームの奥底には何があるんでしょうかね?
私自身、先の展開が楽しみです。

 

ということで、本日はこんなところで~