今年のゲーム② 『文字化化』

 

この記事は、東京大学ゲーム研究会アドベントカレンダー2024、20日目の記事です。

はじめに

今年も記事執筆数5本でトップを独走中の、TGA21のヤクガラスです。
とはいえ、昨年は人数不足に追い込まれた末の5本、今年は何となく去年の記録を維持したくて自ら狙っての5本です。
無理なく25日目まで埋められそうな現状を考えると、昨年から飛躍的に進歩していると言えるでしょう。

この感じが来年も続くと、流石に5本キープは難しそうですね。
素直に後の世代に道を譲るとします。

 

さて、本題に入る前に少し私事を失礼……。

当方、昨年・今年と併せて10本の記事を掲載させていただいています。
内容はメジャーなゲームのプレイ報告から変なゲームの紹介まで、毎回ばらけるようにしていますが、これは別に気遣いでもなんでもなく、ただ私が雑食なゲーマーだというだけです。
リアル人生ゲームのリソース管理がかなり難しいので、何でもやってみるというわけにはいきませんが、そこそこ幅広くプレイしている方ではあるかと思います。

 

そうは言っても、一応好みのジャンルもあれば、苦手ジャンルもあります。
得意ジャンルはパズルアクションとターン制RPG含むストラテジー一般です。要するに、プレイヤー視点でそこそこの動きがあって、思慮考察の余地があるゲーム、って感じですね。
一方で、苦手なのは恋愛シミュレーション等のストーリー進行主体のADVとリアル寄りのスポーツゲーム。理由は「楽しみ方が分からないから」です。ADVの場合はゲームをやっている感覚が薄いこと、スポーツゲームは実在の選手について全く知らないことが足を引っ張っています。

 

前置きが長くなりましたが、なぜこんな話をしたかと言いますと、ぶっちゃけこの先の内容の保険です。
というのも、今回紹介するゲームはジャンル的には「恋愛&探索型ADV」ってところです。つまり、後者寄りのゲームですね。
なので、馴染みのないジャンルなだけに「変なこと書くかもしれないけど、許してねー」という程度の意思表明です。
とはいえ、充実したストーリーとキャラクターの魅力の背後に、確固たるゲーム性が備わっていて、私みたいな雑食ゲーマーでも楽しめるゲームになっています。

 

ということで、本日は『文字化化』のお話です~

 

文字化化ってどんなゲーム?

『文字化化』は、ゲームクリエイターの八名木氏が作成したPCゲームです。
2023年6月に体験版が公開され、続いて今年11月に製品版がリリースされました。
先述の通り、私はあまりこのジャンルに明るくないので把握していませんでしたが、体験版以前のプロトタイプの公開時点から、国内外問わずかなり話題になっていたようですね。

 

ジャンルは言語解読×女子向け恋愛×脱出ホラーとかなり色々盛り込まれています。
異界に迷い込んだ主人公(女性、自称「美少女」)が、言葉の通じない異界のバケモノたちと交流して彼らの言葉を紐解きながら、バケモノと仲良くなったり、脱出を目指したりする、というのが大まかなストーリーです。

システム的には、メインになるのは「言語解読」の部分ですね。

異界の言語がメッセージウィンドウに単語区切りで表示されます。
各単語には意味が対応しているので、文脈や状況から単語の意味を推測し、埋めていきます。
言葉の意味が判明していくと、主人公の置かれた状況やストーリーの背景、各キャラクターの関係や個性が分かってくる、というゲーム性ですね。

 

 

 

類似したゲームとしては、2年前にリリースされた『7 Days to End with You』あたりが有名でしょうか。
一応そちらも以前プレイさせていただきましたが、短いストーリーながら大まかな判読に3~4時間、完全な言語解読に7時間ほどかかったと記憶しています。
あちらは文字とアルファベットの互換性があったので、英単語で処理するとそこそこ楽に解けました。

一方でこちらは、そもそも単語数が多い上に、英語変換のような抜け道もなさそうです。

 

探索要素については、調査できる場所がプレイヤー向けに明示されるため、かなり進めやすくなって言います。
クリック連打等の若干のアクション要素はありますが、ストーリー演出のスパイス程度の物なので、アクションで苦戦するようなことはないかと思います。

 

ちなみに、ADVでどの程度一般的なのかは知りませんが、ホラー脱出ゲームというだけに、死亡によるゲームオーバーがあります。
なんなら、序盤は言葉が分からないだけにそこそこの頻度で死にます。

ただ、死亡時は直前の選択肢から復帰できる良心設計なので、あまり気負わずにプレイできますね。
とはいえ、死亡シーンがきつくないわけではないので、なるべくなら死にたくはないですが……。

 

とりあえず、基本的なゲーム性と仕様はこんなところですね。

ここからは、実際のゲームプレイを交えたお話になります。
必要以上のネタバレは避ける所存ですが、初見の新鮮な感覚でのプレイにこだわりたい方はご注意ください。

 

実際のゲーム進行

とりあえず、5時間ほど遊んだところで現在執筆中です。
最初のエンディングを踏んだのが2時間ほどプレイしたところで、そこからは選択肢変更と巻き戻しを利用して、エンディング捜索と辞書作成に没頭しておりました。

 

システム面

感想ですが、システム面については「親切設計」の一言に尽きます。
過去に言語解読ゲームをプレイした印象として、初手の取っ掛かりの少なさとストーリーの分かりづらさがプレイのハードルになっているように思っていましたが、このゲームはその印象がかなり薄いです。

 

理由はいくつかありますが、第一にストーリー全体を通して主人公がかなり活躍してくれます。
独白の中でバケモノの意図を組んでヒントをくれたり、割と積極的に言葉を聞き出してくれるんですよね。
特に、否定語や疑問詞、所有格などの汎用語を教えてくれるのが凄く有難いです。

序盤でチュートリアル気味に言葉を説明してくれるフェーズがあったり、絵柄やキャラの動きが充実していたりで、バケモノたちもかなり手厚くサポートしてくれます。

第二に、不思議な話ですが、死亡イベントのおかげで言葉が分かりやすくなるんですよね。
「~しちゃダメ」とか、「~しないといけない」とか言われてそうな場面で、間違った選択をして死亡すると、明確に文章の意味と状況が対応付けられるので、結構なヒントになります。

第三に、このゲームではありがたいことに過去に経由した場面への任意ジャンプが可能です。
しかも、場面の区切りが結構な数あるので、割と気軽に過去の場面に戻れます。
この機能、単純なルート分岐の探索以上に意味があります。
なんせ、過去の場面で使われた単語が、全く別の場面で再登場することもあるわけですから。

ちなみに、先述の『7 Days to End with You』では実はジャンプ機能が実装されておらず、周回が中々面倒くさくなっていました。
代わりというわけではありませんが、あちらに備わっていた「特定の単語が使用された場面を抽出して再生する機能」がこちらにはないので、過去のどの場面で出現した単語か判別するのは少し難しいです。
意味が分からない言葉も、適当に文脈に合わせて埋めておくと、後で思い出しやすいですね。

 

実際の言語解読ですが、3時間ほどで8~9割がた完了しました。
ストーリーが長いことも手伝ってヒントが要所に出てくるので、一週目である程度候補を絞って、二週目で確定・確認するところまで無理なくいけます。
まぁ、答え合わせしたわけではないので、盛大に間違えている可能性もありますが……。

 

一応、苦手なプレイヤー&尻込みしているプレイヤー向けにアドバイスもしておきます。
ある程度は慣れの問題にもなるかとは思いますが、助詞を想定しない文法で文脈をとらえること、概念レベルで広くとらえること、気軽な話し言葉で考えることを意識しておけば、案外と楽に意味がはまります。
個人的には、日本語よりもカタコトの英語を想定したほうが解きやすい気がしますね。
後は、埋まらないところは気にせず進みましょう。先は長いので、その内もっと分かりやすいポイントに巡り合えます。
端から周回前提の設計なので、気にしない方が得です。

 

若干ハードルが高いのは、指示語みたいに特定概念を指さない抽象的な語句ですかね?「道具」とか「場所」レベルのふわっとした言葉は、下手に訳語を限定すると文が崩壊します。
一部は、日本語の語句で無理に表現しようとしない方が、後々楽になると思います。
なお、私の手持ちの辞書の中で一番変な訳は「(広義)生命体」です。
平易な日本語に変換するなら「何か」くらいになりますかね?

 

ストーリー進行

内容は、何となく分かるような、分からないような……。
とりあえず探すべきものは分かったので、この記事を書き終えたら探索に戻ります。

 

それはさておき、ストーリーの雰囲気はホラーをベースに、ラブコメのテイストが加わった感じです。

冒頭からビックリ演出で幕を開け、その後も即死トラップやドッキリイベントに怯えながらの探索となります。
どアップの演出や音声を交えて、かなりしっかり驚かせに来るので、苦手な人は要注意かと思います。

ホラー映画に登場しそうなバケモノたちに出会えば、飛んでくるのは謎の異界語ばかり。当然恐怖心が募るのですが、ストーリーと言語解明の進行につれて、主人公を取り巻くバケモノたちの本性が明るみになります。

 

一貫して主人公に付きまとってお手伝いをしてくれる男、事あるごとに現れて主人公を気遣うナース、怖がりで表情豊かな生首……。
素敵な面々との交流は、不気味な雰囲気とのコントラストも相まって、和やかでかわいらしいものとなっていきます。

そして、深まる交流に逆行するように、あるいは寧ろ順応するように悪化していく主人公の容態。
主人公は何故この不思議な空間にとらわれたのか、彼女が出会ったバケモノたちは一体何者なのか、彼女は無事脱出することができるのか。

好奇心をそそられる、素敵なシナリオ設計になっています。

 

おわりに

ADVゲームというと、古くから人気の探索型脱出ゲームや、昨今映像や作画の発展が目覚ましいノベルゲーム等々、様々あるかと思います。
それぞれに需要がある一方で、個人的には前者は単調にシステムに乗る感覚が拭えず、後者はプレイしている感覚が乏しいことから、苦手意識があります。
そんな中でも、このゲームをはじめ昨今のADVは魅力的なストーリーとゲーム性を両立させる作品が多く、良いとこづくめに思います。

 

「言語解読」という形式のパズルは、会話という日常体験と謎解きという非日常体験の中間のような感覚で、開始のハードルこそ高いものの、没入感があるものとなっています。
その点でも、このゲームはサポートが充実していて入りやすい作品だと言えます。

 

私のプレイもまだ先が長そうですが、ともあれ幅広いプレイヤーが楽しめるゲームじゃないかと思います。
強いて言うなら、お友達を引き連れて複数人でプレイしたほうが楽しいかもしれませんね。
私は深夜にサークルのDiscordサーバーで配信しながらプレイしていましたが、終止一人で寂しかったです……。

 

さてさて、本日はこんなところで~