ゲームAIについて 〜『LOOP8』を添えて〜

 

この記事は、東京大学ゲーム研究会アドベントカレンダー2025、10日目の記事です。

はじめに

 初めましての方は初めまして、久しぶりの方は久しぶりです。TGA17のSKTです。近年はAIの発達が凄くて、色々な分野での応用が見受けられています。そこでゲームの世界でのAI活用について、軽く調べてみました。以下はwikipediaなどからの抜粋となります。

 皆様は、ゲームのAIと聞いた時に最初に何を思い浮かべるでしょうか?私は対戦ゲームでのCPUが思い浮かびました。また、研究室の後輩は『Grand Theft Auto Series』(グラセフ)のNPCが思い浮かんだそうです。このようなコンピューターによって制御される存在は大まかにくくるとキャラクターAIに括られます。キャラクターAIによる制御は1980年代前後に発達したそうですが、ゲームに関するAIは広義の意味で捉えた場合、その歴史はもう40年ほどあるといえるでしょう。

   AI開発の最初期(1940年初頭)から、ゲームとAIは繋がっており、『ニム』をはじめとしたAbstract Strategy Games(将棋やチェスのような運が絡まないゲームの総称)をコンピューター化されました。チェスのプログラム開発もこの時期から始まっていたそうです。その後、『ポン』などのような論理回路で実装された動きをするゲームの開発がされていました。

『ポン』:このゲームってこんな名前だったんだ

 

 そして、アーケードゲーム全盛期の1980年前後で、ついにキャラクターAIがゲームに導入されました。『パックマン』が有名な例としてあげられます。『パックマン』の敵キャラクターの行動アルゴリズムは検索すれば、大量に出現するので、ここでの説明は割愛いたしますが、プレイヤーの動き次第で動きを変えるというのが大きな特徴です。先ほどの『ポン』もある意味では、プレイヤーの動き次第で動きを変えますが、それはプログラム上で設定された単調な動きにすぎませんし、それが『パックマン』の敵キャラクターの動きとは明らかに異なることは、なんとなく感じるかと思います。その後は、AIがNPCを制御する技術の向上に伴いながら、現代へと繋がってきました。

© SQUARE ENIX
記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。

ドラクエの戦闘もキャラクターAIを使用している一例。フローラであることに深い理由はありません。

 

『LOOP8』というゲームのシステムについて

 友人と共に中古ゲーム屋さんで暇つぶしのゲームを物色していたところ、今回のテーマである『LOOP8』というゲームに遭遇しました。最初にパッケージを見た際に、カレルシステムとはなんぞや?、と私は思いました。公式ホームページでは「独自のエモーショナルAI<カレルシステム>によって、プレイヤーごとに異なる体験が楽しめます。」と書かれており、リンク先では多少の具体的な説明もされていました。しかし、その説明を読んだところで具体的にどういうものなのかは謎なままだったので、少し調べてみました。

©2023 Marvelous Inc.
記載されている会社名・製品名・システム名などは、各社の商標、または登録商標です。

しばらくはカルラシステムだと勘違いしてたため、業を背負うゲームかと思って遊んでました。

 

 カレルシステムの歴史は短くなく、2000年に発売された『高機動幻想ガンパレード・マーチ』から存在するそうです。従来のRPGは開発者があらかじめ定めたイベントフラグによって進行されていましたが、カレルシステムでは明確なイベントフラグが存在しません。NPCがAIによって制御されており、ゲームの進行に伴って精神状態や互いの人間関係が絶えず変化していくことで物語が進行することがカレルシステムを用いたゲームの特徴といえます。これにより人間関係の構築がゲームの魅力となっており、wikipediaの情報からだけでも多くの遊び方存在することが伝わるでしょう。

 ここまでのことをまとめてみましょう。カレルシステム下において、NPCを単なる背景装置ではなく、独自の感情値や欲求、記憶を持つ存在として振る舞えるようになります。そのため、プレイヤーが見ていないところでもNPC同士が会話を行い、人間関係が変化していきます。これらの要素が複雑に絡み合うことで物語が形成されていく点が、従来のRPGとは大きく異なる点であり、本システムの魅力となっています。

 ちなみに『LOOP8』に使われているカレルシステムはカレル6と称されるものであり、「エモーショナルAI」という言葉で表され、プレイヤーの選択が世界全体に波及するシステムとして再定義されました。

 

『LOOP8』を遊んだ感想

 中古屋では1000円で売られており、インターンネット上の評価も低めですが、いざ遊んでみると案外面白かったです。ざっくりとした感想は『実況パワフルプロ野球』のシステムを使ったギャルゲーです。つまり『ときめもメモリアル』ですが、先述のカレルシステムによって、想定外の出来事も起こったりするため、割と楽しく遊べました。今回は個人の主観で良かった点と気になった点をいくつか列挙してみます。

良かった点

  1. ボイスが割と収録されている
     低評価のゲームでは登場キャラクターの収録ボイス数が少ないことが多々あります。しかし本ゲームでのボイス数は割と多く、この時点でクソゲーではないな、とは思いました。
  2. レベルアップの概念がないRPG
     RPGなのにレベリングがあまり必要ないという点が個人的には新鮮でした。能力値の調整やキャラ間の関係構築は戦闘の難易度へと繋がりますが、同じ敵を倒して経験値やアイテムを揃える作業は必要ありません。人によって好き嫌いが分かれる部分ではあるとは思いますが、今回は良かった点に分類しておきます。
  3. 想定外の出来事
     カレルシステムの特徴なので、たまに想定外の展開が発生します。深く言及すると面白みが消えるので、詳しくは述べませんが、ある条件下では突然死が起こったりします。人間関係の重要性を学べるいいゲームですね。

 

気になった点

  1. ダッシュが存在しない
     マップ間の移動はメニューから行えるのですが、明確なダッシュが存在しないため、たまにストレスを感じます。学校で勉強するという行為が割と能力値の伸びに重要なのに、校庭が無駄に大きいのと教室までが地味に遠いのとで移動が面倒だと私は感じました。ぜひご自身で体験してみてください。
  2. カクツキがある
     これは戦闘中の話です。戦闘自体はあまり発生しないのですが、せっかくカッコいい戦闘シーンが用意されているのに、カクツキによって盛り上がりが下がってしまうように感じました。
  3. 周回が面倒
     タイトルから分かるように、ループする類のゲームではあるのですが、通常クリアだけなら2〜3周で到達することが可能です。ループ後は能力値の成長幅が増加しやすい仕様ではあるのですが、各エンディングの全回収まで到達するには比較的長い時間を要します。また、自身の行動の周りへの影響度が分かりづらいこともあり、人によっては単調な反復作業と感じてしまう恐れも感じました。実際、私も終盤の方は作業感を覚えていました。
  4. 想定外の出来事
     やはり想定外の出来事は怖いです。他者へ一度話しかけてしまう(操作ミスであろうがなかろうが)と、関係値の上下が確実に発生するため、機嫌がいい時に話しかける必要性があります。しかし、数秒前まで笑っていた人が急に怒り始めたり、泣き始めたりするので、正直困ります。一応、相手の雰囲気を確認する機能はあるのですが、毎回これを行うのは正直面倒です。これも上述の周回の面倒さの一因となっているとは感じました。

 

最後に

 ゲームAIの発展は今後ますます目覚ましいものとなっていくと思います。もはや現実の人間とNPCの区別がつかなくなる日も来るのでしょうか?それはそれで楽しいゲームができそうですが、新たな社会問題も生まれそうで同時に少しの恐怖心も湧いています。『LOOP8』のネット上での評価は高くはないですが、中古屋で安めで売っていたら全然勝ってもいいと私は思っています。

 長くなってしまいましたが、ここまで読んでくださりありがとうございました。