今年のゲームその① 『Zenless Zone Zero』

 

この記事は、東京大学ゲーム研究会アドベントカレンダー2024、2日目の記事です。

はじめに

アドベントカレンダー2024、2日目はTGA21のヤクガラスが担当させていただきます。

ところで、昨年も含めて割と自然に「TGA〇〇」という表現を使っていますが、これって伝わってるんですかね?閲覧者の中に一般の方がどれくらいいるのかは把握できておりませんが、何のことはなく、TGAの入会年度が「20○○年」というだけの意味です。会員が入れ代わり立ち代わりで記事を書く都合上、頻発する表現かと思いますが、「この人は割と前からいるんだなー」とか、「最近入った人なんだなー」とか、その程度に思っていただければ幸いです。

 

さて、前置きはほどほどにしまして本題に参りましょう。

昨日は本会の振り返りとなりましたが、本日からは会員一同が思い思いに「ゲームの記事」を執筆していきます。私の方からは、ウォーミングアップがてら、今年公開されたゲームのお話をさせていただきます。

 

ということで、本日は『Zenless Zone Zero』のお話です~。

 

『Zenless Zone Zero』ってどんなゲーム?

ゼンレスゾーンゼロ、通称「ゼンゼロ」は、今年7月にmiHoYoから公開された、いわゆる「ホヨバゲー」です。近未来的な都市を舞台にしたアクションRPGで、『原神』や『崩壊』シリーズからは独立したストーリーですが、魅力的なキャラクターと徹底した世界観構築は健在です。対応プラットフォームはiOS・Android・Windows・PlayStation 5で、基本プレイは無料です。

 

ストーリー

ネタバレになってしまわない程度に、簡単に紹介させていただきます。

背景

舞台は、謎の災害「ホロウ」によって文明社会の大部分が消失した世界。生物や機械に致命的な侵食を生じる未知のエネルギー「エーテル」が充満した異空間「ホロウ」が各地で発生したことで、世界は崩壊寸前まで追い込まれます。
そんな中、唯一ホロウ対策とエーテルの資源利用に成功して、周囲とは対照的に発展を遂げた大都市「新エリー都」が、ストーリーの中心地となります。

 

さて、ホロウ対策技術が確立され、現代的な暮らしが残留している新エリー都ですが、依然としてホロウの謎は深く、突発的なホロウ災害による被害も絶えません。
そんな中で、エーテル浸食に耐性のある「エーテル適応体質」や「抗エーテル素材」を持つ住人は一定時間のホロウ内での活動が可能であり、ある者は公的な「調査員」として調査や人命救助のために、ある者は違法な「ホロウレイダー」として己が利益のために、日夜ホロウへと侵入しています。

プレイヤーが操作する主人公はホロウ内のガイド役として外部からサポートを担う「プロキシ」であり、各勢力の思惑が交錯する都市空間の中でホロウレイダーたちと協力して、「とあるの目的」のためにホロウが関連した事件を解決していきます。

 

長々と書きましたが、簡潔に言えば「世界各地で謎の異空間が発生して多くの都市が崩壊した」「異空間の対策を行った「新エリー都」だけが残った」「主人公は異空間のガイド役として、内部の探索をサポートする仕事をしている」という点だけとらえれば、比較的分かりやすいかと思います。

 

世界観・ストーリー観

「新エリー都」では人間の他、特定の動物の特徴を保有する亜人「シリオン」、人間の魂に該当する「論理コア」を搭載した「知能機械人」がそれぞれの暮らしを営んでいます。シリオンに関しては、動物ベースで擬人化したような個体と人間に動物のパーツを生やした程度の個体がいますが、差異は不明です。混ざっている動物も、猫や熊のような哺乳類だけでなく鮫や鬼など、哺乳類以外の動物から伝承まで幅広く採用されているようです。知能機械人の方は、同じく完全に人を模したような個体から要所に機械的な面が強調された個体まで幅広くいます。

特徴的なのは、街中で見られる「ボンプ」という小型の機械人でしょうか。ウサギ耳が生えたお助けロボットで、「ンナ!ンナ!」という不思議な鳴き声、もとい独自言語で会話します。モチモチした挙動や可愛らしい仕草を見せるマスコット的な側面が強いですが、機敏な動きとカスタム性の高さから重宝されており、ゲーム的には戦闘に加わってくれるパーティーメンバーでもあります。
youtubeにて公開されているテーマソング『ボンプのうた』も可愛らしいので、ぜひご視聴下さい。

 

話を戻しまして、前項で「抗エーテル素材」を持つ住人と書きましたが、これは知能機械人のことですね。機械だからと言って侵食を受けないわけではなく、抗エーテル素材でも長時間の滞在は危険なようです。

自律式の機械の存在に加えてARシステムやホログラム等、要所で機械関連の技術に大幅な進展が確認できる一方で、都市空間は渋谷を思わせる現代的な環境となっています。ラーメン店やミルクティーショップが立ち並ぶ街並みは、馴染みやすい環境かと思います。

 

どことなく東アジア的な街並みや文化が取り入れられている世界観ですが、ストーリー演出は寧ろアメリカンカートゥーンを思わせる華やかなものやコミカルなものが多い印象です。時折挟まる漫画パートの進行や3Dアニメーションは、特にその傾向が強いですね。個性的なキャラクター性、テンポの良さも相まって、かなり楽しめるかと思います。

 

システム

ゲーム進行に関しては、依頼の受注やホロウ内のナビゲーション等々いろんな要素がありますが、ここではメインの戦闘面にだけ触れていきます。

ホロウレイダーたちはホロウ内で侵食を受けずにある程度自由に活動できますが、ホロウ内の危険はエーテル侵食だけではありません。過去に侵食された人や機械は「エーテリアス」という怪物になり、ホロウ内を闊歩しています。ホロウ探索中の要所において、プレイヤーはホロウレイダーを操作して戦闘を行う必要があります。
先ほどプレイヤーが操作する「主人公」の話を出しましたが、実際のところゲーム的に主に操作するのは、主人公らが招集したホロウレイダーということになります。

 

基本操作は移動に加えて、通常攻撃、特殊スキル、回避、交代、終結スキルから構成されます。細かなコマンド操作がないのは、スマートフォンでのプレイを想定してのことでしょう。
「交代」についてですが、本作は3キャラクター+ボンプのパーティが基本となっており、キャラクターは戦闘中に任意で交代することができます。キャラクターの属性や所属、特性に応じてボーナスが乗るので、組み合わせは何気にかなり重要です。
ボンプについては、基本オートでついてきて、敵が出現すると勝手に攻撃してくれます。攻撃方法はボンプによりますが、可愛らしく「ンナンナ」とはしゃいでいた様子から一転して、ガトリング砲で敵を蹴散らす姿は圧巻です。

 

実機の操作で特徴的なのは、回避と交代の仕様ですね。いずれも、相手の攻撃タイミングに合わせて発動することで「極限回避」「極限支援」を発生することができます。
「極限回避」はいわゆる「ジャスト回避」的なものであり、成功すると背景が暗くなる演出と共に一瞬ゲーム速度が遅くなり、強力な回避反撃に移行することができます。システム的な回避の重要度は言わずもがな、一瞬の速度低下は、全体的にハイテンポで進む本作の戦闘に緩急を与える中心的な要素と言えます。
「極限支援」は「回避支援」と「パリィ支援」に分けられますが、特定の攻撃に対して交代動作を合わせることで、裏にいるキャラクターが敵の攻撃を代理で躱したり、弾いたりしてくれます。火花が散るスタイリッシュな演出もさることながら、成功時には回避反撃よりも強力な「支援突撃」に派生することができます。ゲームの流れとしてもシームレスで自然な形で後続のキャラクターに交代できるため、同じく戦闘の速度感を際立たせる仕様となっています。

この他、いわゆる「必殺技」に該当する終結スキルや敵ダウン時の連携攻撃など、きれいな演出が絡む派手なアクションが多く、総じて上手くリズムをつかめれば、かなりハイテンポで楽しいゲームです。

一方で、戦闘中の回復手段が乏しく、基本的に敵の攻撃は回避・パリィ前提となるため、アクションゲームに慣れていないと少しつらいかもしれません。とはいえ、敵が攻撃する際に予告音と演出が入りますし、判定もモンハンのフレーム回避と比べればかなり緩いので、見た目以上に簡単にスタイリッシュな戦闘を再現できます。

 

終わりに

少し中途半端にはなりますが、終わりどころがなくなってきそうなので、この辺で切り上げようかと思います。

執筆時現在、本作のバージョンは1.3となっています。
公開当初こそキャラクター数の少なさもあり、パワーバランスに不安がありましたが、現在はキャラクターが増えたことでパーティ構築の幅が広がり、コンテンツも充実してきています。

公開から約半年、ストーリー的にはまだまだ先が長そうなので、今からでも十分に最前線に追いつけるはずです。

興味のある方は是非、実際にプレイしてみてください~

 

2024年の振り返り

 

この記事は、東京大学ゲーム研究会アドベントカレンダー2024、1日目の記事です。

はじめに

 2024年度TGA代表のたもと申します。 今年もアドベントカレンダー企画を実施することになったわけですが、誰も初日はやりたがらないと思うので、代表である自分が無難に今年一年の振り返りでもしてお茶を濁したいと思います。

3月

代表就任

 の少し前に部室が没収されました。我ながらとんでもないサークルの代表になったもんだと思いましたが、部室を失ってのスタートならもう何でもアリだろうと思うと気が楽になりました。 (誤解のないよう言っておきますが、何か悪いことをして没収されたわけではないです。)

規約改定

 ほぼ先代の仕事ですが、ゲーム研究会の規約を改正しました。新規約はここで確認できます。

4月

新歓

 思いがけず、例年より多くの新入生が入ってくれました。部室を失ってオンラインでしか活動できないサークルで本当にいいのか?という感じですが、オンラインだからこそ気楽に参加できるという面もあるのでしょう。そもそもコロナ禍で対面の活動が制限されてからはオンラインでの活動が主流だったので、ゲー研も時代に合わせて進化しているのかもしれません(適当)。

5月

ロッカー没収

 されかけました。もともと部室とは独立して備品を入れるロッカーと会誌印刷用の紙などを保管しておくロッカーを学館から割り当てられていたのですが、申請ミスだか何だかで後者を没収されることになりました。納得できなかったので引き渡しに応じずにいたら本当に場所を追われ、中身も一時的に撤去されるところまでいきましたが、委員会とのレスバの末なんとか取り返しました。何ならもとのロッカーよりデカくなりました。

五月祭

 特に何事もなく終わりました。強いて言うなら、割り当てられた部屋が狭くて大変でした。

8月

夏コミ

 ここ数年は会誌の表紙が寒色続きで退屈だったので、黄色くしてみました。あと、集客用に大きなポスターを作って持ち込みました。効果があったかは定かではありません。

11月

駒場祭

 10年ぶりに大運動会が復活し、5年ぶりに来場者参加型企画を実施しました。割り当てられた部屋にあるはずのモニターが消し飛んでいるという事件がありましたが、何とか無事終えられました。

12月

アドベントカレンダー

 完走できるんでしょうか。

冬コミ

 会誌を鋭意作成中です。12/29(日)、東S63bで会いましょう。

終わりに

 こうして振り返ってみると激動の1年でした(主に部室とロッカー)。代表としては無事(?)任期を終えられそうでホッとしていますが、ゲー研の活動は来年以降も続きます。ここ数年で会員が増え、コロナ禍以前の活気を取り戻しつつあるので、この調子でもっと賑やかで楽しいサークルになっていくことを願ってこの雑文の締めとしたいと思います。最後までお読みいただきありがとうございました。

ぷちSteamパズルゲーム品評

はじめに

TGA22のトマノフです。

1週間とちょっとぶりで、皆さんからしたら1週間というのは大したことじゃないと思いますが、

私はその間に秋学期の試験と、イベントがあったので、一週間前が遠い昔のように感じています。

 

さて、自分語りはそこそこに、本日の記事に入っていきましょう。実は私、今年の夏コミにてSteamのパズルゲームの品評を行っておりました。

簡単に言うとSteamに存在する無数のパズルゲームから(界隈では)少し有名なものを品評していたわけですが、品評すると公言している以上最低6割はプレイしていないと許されないという基準をなんとなく持ってやっていました。

ただ、パズルゲームを6割解くというのは簡単ではなく、最初の方だけを解いて記事に間に合わないと判断して放置したゲームが大量にあります。

そのような積みパズルゲームをここで放出しようというのが今回の記事になります。

 

前置きが長くなりましたが、浅いパズルゲーム品評を始めていきます。ネタバレ配慮はしていますが、多少のネタバレを含みますので、ご注意ください。

 

ぷちパズルゲーム品評

A=B

プレイ時間 6.5時間

定価 580円

『A=B』はマルコフアルゴリズムを題材にしたゲームです。マルコフアルゴリズムに関してはたもくんが12/9の記事で紹介していましたね。

基本的にはa,b,cのみで構成される1~7文字の文字列に対して特定の操作を実行するプログラムをマルコフアルゴリズムで書くというものです。まあ基本的にはMAOと同じです。

また、Chapter2まではマルコフアルゴリズムに元々存在する規則のみで構成されていますが、Chapter3以降は『A=B』特有の規則を用いることができます(というか使う必要があります)。

単純なゲーム性ですが、マルコフアルゴリズムの拡張性はとんでもないため、結構難しいです。自分はChapter4まで開放しましたが、そこから詰んでいる状態です。また、一度クリアすると最小手数が公開されるのですが、それを目指すのは修羅の道です。

本筋ではないのですが、『A=B』にはミニゲームが付属していて、それが拡大再生産もののボードゲームと近くて結構面白いです。

ちなみに、現在Steamではセール中で、30%OFFになっています(1/5まで)。お手に取ってみてはいかがでしょうか。

こちらがゲーム画面。(return)がいわゆる停止規則のこと。

ちなみに上のプログラムは別の問題から援用してきたので、今回の要求されているものとはまったく関係がない。

 

The Golem

プレイ時間 2.1時間

定価 1010円

ステージ内の「+」タイルと「-」タイルを全て消したらクリアの倉庫番系のゲーム。下図のプレイ画面も参考にしてほしいのですが、プレイヤーは半球に目と足がついたゴーレムくんである。茶色い箱は押すことができ、箱が「+」タイルに隣接すると箱が「+」タイルのところに箱が追加され、箱が「-」タイルに侵入するとその部分が削除される。それぞれのタイルは自身の効果(箱の増減)をすると消えます。

見た目やシステムは一般的な倉庫番系のパズルゲームですが、その難易度はハチャメチャに高く上級者向け。
最近はルールのややこしさやメタステージ的な挙動が評価されがちですが、硬派なパズルを作り、その完成度で勝負しようとしていることは個人的に評価が高いです。

初心者にはおすすめしませんが、パズルゲームに自信がある方はぜひやってみてください

ただ、少しUIがプレイヤーに不親切で異様に重い(とはいえ最近の美麗グラフィックのゲームと比べると圧倒的に軽い)ことは気になる。オススメはしたいのだが、オススメできるとはいえないくらいのバランスです。

 

Cosmic Express

プレイ時間 4.6時間

定価 1700円

宇宙人を適切な場所に送り届けられるように線路を引くゲーム。一筆書き系のゲームですが、とにかくギミックが豊富で飽きさせない工夫がされています。宇宙人は荷台の数しか乗れなかったり、荷台の位置からしか乗り降りができなかったりと電車特有の要素によって工夫が必要なステージが作られているのもポイントが高い。

ギミックにはだれでも降りることができる箱(逆に言うと誰でも降りてしまう箱)や、一度乗せるとその荷台が使えなくなる乗客、十字路など箱、乗客、線路それぞれに対しての拡張ルールなので、拡張性が高いのも良いです。プレイヤー視点でなくて申し訳ありませんが、まだ、組み合わせたステージに遭遇できていないのでわからないです。

また、設定によってすべてのステージを開放でき、ステージのスキップが可能なのでどこかで詰まっても先に進むことはできます。今回紹介したすべてのゲームに共通しますが、ヒントがないので、完全に初心者向けとまでは言いませんが、わかりやすいルールで効率よくパズルを解く快感を味わえるでしょう(後半はなかなか難しいですが)。

余談ですが、スキップとヒントは全パズルゲームで搭載してほしい機能ですよね。本当に思いつかないときは数時間考えても思いつかないことがあるので、詰まったときの救済がないと一人で黙々とパズルを解いている自分にはつらいところがあります。

話を戻しますと、こちらも現在Steamでセール中で、75%OFFで425円とお安く手に入ります(1/5まで)。セールの頻度は高いゲームなので、焦る必要はありませんが、ぜひやってみてください。

オレンジ色のマークがついた箱にオレンジ色の宇宙人、緑色のマークがついた箱に紫色の宇宙人を連れていく必要があります。

最後に

こちらで、今回の記事は終わりになります。やはり踏み込んだ内容を言わずに魅力を伝えるのは難しいですね。

実際の会誌ではネタバレのない感想と、ネタバレありの感想の2つの項目に分けて、後者では定石や隠し要素などに触れるようにしています。

今度の冬コミでキャパオーバーで寄稿できませんでしたが、次の夏コミではSteamパズルゲーム品評2を寄稿する予定です。この記事を面白いと思っていただいた方はお手に取っていただければ幸いです。

 

こちらの記事で東京大学ゲーム研究会 Advent Calender 2023は終了になります。最後であることを全く意識せずに書いていたため、全く大衆向けではない内容で申し訳ありません。

全体の統括を申しますと、12/2から開始になってしまいましたが、そこからは欠けなく記事が上がっていて驚きました。Advent Calenderとしては当たり前なのですが、さすがに24記事ですから難しいかなと思っていました。寄稿してくださった皆さんありがとうございます。また、企画を提案し、全てを総括してくださったClomyさんに多大なる感謝を。

また、私個人としては人の文章を読むのが趣味なので、色々な人の文章を読めて楽しかったです。色々な人の感性を垣間見れて最高でした。

東大ゲーム研究会 Advent Calender 2023を読んでくださった皆さまが良きゲームライフを過ごせることをお祈りしております。

【令和最新版】WHITE ALBUM2聖地巡礼記事

はじめに

 みなさん、こんにちは。今日はクリスマスイブということで、名作『WHITE ALBUM2』の記事を寄稿させていただきました。『WHITE ALBUM2』は、2010年にAQUAPLUSの美少女ゲームブランドLeafから発売され、10年以上たった今なお高い人気を誇っている作品です。本作は1998年に発売された『WHITE ALBUM』の続編となっていて、楽曲や作中の設定を引き継いでいる部分はありますが、ストーリーの繋がりはなく、前作をプレイしていなくても十分楽しむことができるようになっています。

 『WHITE ALBUM2』は、『パルフェ 〜Chocolat second brew〜』や『この青空に約束をー』で知られていた丸戸史明先生の持ち込み企画で制作された作品で、そのテーマは「浮気」です。本作では、その場の状況に流されやすい主人公がややこしい事態を招き、明確な悪者がいないにも拘らず、人間関係がドツボに嵌っていくというストーリーとなっています。一般的な通念として浮気は悪であるとされていますが、本作ではただ主人公のことをこき下ろせばいいという単純な作りにはなっていません。読み手も主人公たちと同じ視点に立ち、どうするのがいいのだろうか、どちらを選ぶのがいいのだろうかと悩み、葛藤させられるようになっていて、それがこの作品の醍醐味だと言えるでしょう。本作では高校生編のintroductory chapter、大学生編のclosing chapter、社会人編のcodaという3部構成が採られ、物語全体を通じて主人公たちに重くのしかかり気を滅入らせてくる確執に、codaで鮮やかに終止符が打たれます。icやccも十分に面白いですが、本作の魅力はやはりcodaにあり、このグランドフィナーレが本作を名作たらしめているのではないでしょうか。

 来年、AQUAPLUSが設立30周年の節目を迎えることもあり、『WHITE ALBUM2』の話題が盛り上がっているので、ちょうどいいタイミングだと思い、今回聖地巡礼記事を執筆することにしました。聖地を訪れたことがない人だけでなく、発売されてからそれなりの年月が経過していることから、過去に聖地巡礼したことがある人にも、今の風景に興味を持ってもらえたら幸いです。また、今回はアニメ版を参考にしつつも、専らゲーム版のイラストを取り扱うことにしています。

聖地巡礼

JR新宿駅7番線・8番線プラットホーム

 新宿駅構内は御宿駅構内のモデルに使われています。奥に青い車両が見え、JR新宿駅に発着する青い車両にはりんかい線がありますが、りんかい線のホームで駅名標とショップがある場所は階段下で天井が遮られていました。駅名標とショップがこのような配置にあるのは、7番線・8番線のプラットホームしかなかったです。もっとも、新宿駅のホームにベンチはなく、ゲーム制作時の新宿駅がどうだったかについては知らないので、ここに拘らずとも駅名標さえ写っていればそれでいい気もします。

新宿駅東南改札

 御宿駅の改札で、1・2番線に下野・東都方面の東都行き、3・4番線に木葉・面安方面の南千場行きと記されています。これがりんかい線や湘南新宿ラインを指していると考えると、ちょうど新宿駅の1〜4番線に当たることになり、これらの路線に近い東南改札がモデルになっていると推測することができます。

 ここだけ撮影し忘れたので今度余裕ができたら追加します……

新宿駅東口駅前広場

 codaで記者と揉めて公衆電話をかけてきたかずさと待ち合わせた場所です。新宿駅は大量の改札や出口があるダンジョンとなっていますが、ここから街へ繰り出すことが多い気がします。

新宿アルタ

 エクストラエピソード『不倶戴天の君へ』のラストシーンで登場する背景に使われています。このエピソードはcodaの浮気√のその後を描いた物語で、雪菜の春希への想いの深さが伝わってくる個人的に好きなストーリーです。ネタバレ画像になるので、ゲーム内からの画像の引用はなしにします。

紀伊國屋書店新宿本店

 繁華街として登場する背景で、ぱっと見ではあまり一致していませんが、ここが聖地だと思います。作品内でONJYUKU BOOKSがある右の建物は、写真で工事中の旧新宿マルイカレンに似ています。

伊勢丹新宿店

 春希が働いていた開桜社のモデルと言われていますが、かなり怪しいです。そもそもここはアニメ9話でデパートという異なる建物のモデルに使われていて、開桜社だとするのは眉唾物だと思います。

東京都道新宿副都心八号線

 ic終盤の春希がかずさを抱きしめるシーンで使われています。ゲームだけで背景を特定することは難しいですが、アニメ11話の同シーンで特徴的な損保ジャパン本社ビルが写っていたので、この通りだと思います。他に手掛かりとなるものは特にないので、この道沿いの任意の地点を聖地だと考えて問題なさそうです。

新宿中央公園ちびっこ広場

 御宿の駅の近くにある公園ですが、現実では新宿駅から少し歩いた場所にあります。元々はもっとゲームと似ていましたが、2022年9月のリニューアルオープンに伴う工事でだいぶ変わってしまいました。ちびっこの笑顔を思った新宿区の行政を非難できるはずもありませんが、景色が失われたのは残念です。

吉祥寺駅前

 高校や大学がある南末次駅のモデルです。南末次駅前には吉祥寺駅前が使われていましたが、2014年にリニューアルされた現駅舎とは相貌が一変しています。ストリートビューで2009年時点の駅舎を見ることができ、そちらでは瓜二つとなっています。

ゆりかもめ新橋駅プラットホーム

 ccのクリスマスイブに雪菜とのデートで有海に向かうときの駅です。有海は有明のことを指していると思われます。

お台場海浜公園

 雪菜とのデートでキスをした場所となります。奥にフジテレビ本社ビルらしき建物や観覧車が見えるので、お台場がモデルになっているのは間違いないと思います。ただし、お台場には去年までパレットタウン大観覧車がありましたが、それは既に解体されています。海とフジテレビ本社ビルと観覧車が同時に見えたはずの場所は撮影した道くらいしか存在しませんが、背景画像にはあまり似ていません。雪菜とデートする雰囲気が楽しめれば、それで十分でしょう。

江戸川遊歩道

 南末次駅を降りて大学や高校からさらに歩いたところにある川です。遊歩道の南端から北端まで散策してみましたが、ゲームの背景と一致する場所はなかったので、雰囲気が似ていたさくら堤公園の辺りで撮影しました。アニメ版だとピッタリと一致する場所があります。

立教大学新座キャンパス1号館

 ccで春希たちが通っていた峰城大学のモデルとされている場所です。聖地と呼べるかはかなり微妙なラインですが、立教大学が峰城大学を元にしている可能性があることも加味すると、聖地と言っていいのではないかと思います。雪菜とすれ違った建物や大学の校門にもモデルがないかとキャンパスを探し回りましたが、該当する場所はありませんでした。

南古谷駅舎

 南古谷駅は雪菜の実家がある末次町駅のモデルとなっています。実際にはKIOSKや書店はなく、写真を左右反転させています。新座からは近いですが、都心からは埼京線で一本とはいえかなり離れたところにあります。

 南古谷駅構内は、かずさの豪邸の最寄り駅である岩津町駅の構内に使われています。電車については、アニメでは総武線が登場するのに対し、ゲームでは全く異なる車両となっています。

アンナミラーズ高輪店

 春希や小春のバイト先の制服のモデルとなっているアンナミラーズは、都市計画により2022年8月に高輪店が閉店したことで、国内ではオンラインショップと期間限定出店のみでの営業になってしまっていました。しかしながら、日本上陸50周年にあたる2023年6月になんと仮想店舗がオープンし、アンナミラーズ高輪店を自由に歩き回ることができるようになりました。下記のリンクから、バーチャルショップに行くことができます。

https://web1.raycomide.net/sites/amShopPh1/src/index.html

その他

 今回の記事で取り上げた以外にも、雪の大谷、成田空港、長野電鉄長野線、ストラスブールが聖地になっています。雪の大谷は、icのクリスマスにかずさと雪菜と一緒に訪れた場所で、codaの浮気√で再び登場します。雪の大谷は富山県の立山黒部アルペンルートにありますが、現実では一般車両の乗り入れは不可能で冬場は閉鎖されています。成田空港は、第2ターミナルのチェックインカウンター・見学デッキと成田空港第2ビル駅がicのラストシーンに登場します。かつて成田エクスプレスとして運用されていたJR東日本253系電車も列車内の背景に使われていて、現在では長野電鉄2100系電車に転用されています。ストラスブールは、codaでかずさと再会した場所となっていて、作中で描かれているようなクリスマスマーケットが有名です。

 また、ccの麻理√では、バッティングセンターとニューヨークの空港内がCGに使われています。新宿にはバッティングセンターが2店舗ありますが、作中で言われているようなアミューズメントビルの最上階には構えていません。次に、ラストシーンの空港については、ニューヨークに2つ成田空港から直行便で飛べる国際空港があるとはいえ、モデルとなった場所があるのかは定かではありません。ccのヒロインの中では麻理√が好きだったので、いつかニューヨークに行くとき確認したいと思います。

 最後に、codaの雪菜true√で関西の雪菜の元に残らず、コンサートをするかずさのいる関東へ向かう際に、100系らしき新幹線が背景になっています。100系が東海道新幹線を引退したのは『WHITE ALBUM2』が発売されるよりはるかに前の2003年ですが、シンデレラエクスプレスのイメージから100系にしたのでしょうか。

おわりに

 以上、『WHITE ALBUM2』の聖地巡礼記事でした。私が本作をプレイしたのはだいぶ前のことだったので、記事を書いていると懐かしい記憶が蘇ってきました。冬コミに他9作品の聖地巡礼記事を寄稿しているので、もしよかったらそっちもよろしくお願いします。ご精読ありがとうございました。

コミックマーケット103

製品紹介

PC版

https://leaf.aquaplus.jp/product/wa2cc/index.html

PS3版

https://aquaplus.jp/wa2/

PS Vita版

https://aquaplus.jp/wa2vita/

スプラトゥーンのプレイ時に自分の主体自己が成立していることを確信してしまった人のお話

はじめに

 はじめまして、TGA23のばんちっちばんです。12日の記事を担当なさったせなおまるさんと同じく会員として文章を出すのは初めてで、また書く内容も、基本はスプラトゥーンシリーズのゲームに言及してお話しますが、ゲームの攻略だとか紹介だとかいうよりは少々抽象的なものを書こうと思っているので雰囲気も何かと似ているかもしれません。せなおまるさんのように読者がいかなるゲームの経験を持とうともどこかしらに何かが引っかかるような記事にできるかどうか不安ですが、僕なりに頑張って書くつもりなのでどうぞお楽しみください。

 まずはじめに僕とスプラトゥーンの個人的な関わりの話から話を始めます。僕は小5の時に初代『スプラトゥーン』を発売日に学校を休んでまでして買いに行って遊んでから、『スプラトゥーン2』そして『スプラトゥーン3』とそのソフトを変えながらも現在までこのスプラトゥーンというゲームを楽しませていただいております。基本的にガチマッチ(3だとバンカラマッチですね)で遊ぶことが多く、気になる(?)ウデマエの方は初代はS+の後半あたりで一回だけS+99経験、2はルールにもよりますが平均してXパワー2250くらい、3はまだシーズン二つだけをほんの少ししか遊べていないのですがXパワー2250くらいかという感じです。まだまだ上を目指せる気がするのでこれからも引き続き分析と修練を積みたいと思うわけですが、いったい何が僕にこのゲームをプレイしたいと思わせるのでしょうか。皆さんもゲームは違えどふとこのような疑問を抱く瞬間があろうかと思います。では次にこの謎の原動力に感覚的に迫ってみます(ここからしばらく主観多め…)。

 個人的には、先ほどの向上心はスプラトゥーンの試合形式、すなわち<マルチプレイヤー>、<対戦>、<アクション>の3つの要素をあわせもつ試合形式がもたらすそもそもの楽しさ、というとてつもなく大きな原動力が背後にあってこそのものだとなんとなく感じております。<ゲームデザイン>や<ゲーム内イベント>など他の大事な要素がスプラトゥーンの特異性を際立たせている事は十分承知しておりますが、話をある程度一般化するためにとりあえずこの漠然とした感覚を出発点として僕はスプラトゥーン、ひいてはそういったゲームをプレイする原初の楽しみとは一体何であるのかを考えます。

 僕、またおそらく他の一定数の方々の場合、心地よさを感じる核となるのはガチマッチで遊んでいる時、もしくはそれを想起する時に訪れます。しかしそれは決して試合が勝利に終わったか否かに依存するわけではなく、総じて(半ば強引に聞こえるでしょうが)、試合中の感覚・知覚をもとに個人及びチームとして勝つための「自然な」選択をしている、ということにある程度帰着すると考えています。例えば個人のレベルでは、適切なタイミングでスペシャルウェポンを発動したり、センプク後に、”今だ”、と直観的確信をもってキルを取りにいこうと動き出したりする瞬間などはゾクゾクした気持ちが込みあがってきますよね。さらに集団のレベルでは、やられそうになっているときにタイミングよく味方が加勢してくれるとか、互いに「自然と」発された自分と味方の戦術がうまくかみあって相乗効果を生む時とか、チームが1つの有機体のように働き、個々人が渾然一体となる試合はスプラトゥーンの理想的な境地と言えましょう。なので仮に僅差で負けてしまったとしても、やれることはやった感のある後味の良い試合経験として刻まれることになります。また逆に、自分の圧倒的な活躍で収めた勝利には達成感がありながらも同時にいくらかの寂しさがあるのは、個人のレベルでの「自然さ」を尽くしながらもチームのレベルでの「自然さ」が存在しないからと説明できます。

 <マルチプレイヤー>の要素が欠ければチームのレベルでの「自然さ」を想定しづらいですし、<アクション>の要素がない<ターン制>のゲームで、ノエシス(後で説明されます)の働きを感じることはなかなか難しいのは十分承知しております。しかし、みなさんがプレイするゲームにおいても「自然さ」の中で快を得ていると表現できる瞬間はありませんか?僕は個人およびチームのレベルでの「自然さ」をぼんやりと心地よいなと思っていたところ、この度『あいだ』(木村敏著、筑摩書房)を読んでその感覚が「個別的な意識の主体性を止揚した集合的・間主体的で自律的なノエシス・ノエマ相関」(p.54)の中で成立しているということが明晰に把握された挙句、その時=スプラトゥーンをプレイしている時に僕に「主体性」と「自己」が成立していることが論証されてしまいました。ここからはその論理の過程を簡単に紹介させていただきます。それでは、「あいだ」の世界へ。

 

『あいだ』(木村敏著)との邂逅_________

 本書の理論は、生きるものは全て「生命一般の根拠」なるものとのつながりを維持しているのだ(p.12)という措定を出発点とし、特に人間がそれと関わる時に成立している状況を解説しています。言い換えると人間が生きていると言える状態を描き出してくれているわけですが、僕はスプラトゥーンをプレイしている時にこの理論で想定されている状況が概ね当てはまっているなという認識に至り、とりもなおさず僕は生きているんだと確信に近いものを得たのでした。先ほどの引用したものがその状況を端的に表していた箇所でして、そこでは外部性と内部性を属性として持つ「あいだ」(一見すると矛盾しているように見えるため著者は「虚の空間」とも表している)が発生していると言います。そして実はその「あいだ」こそが主体自己を成立させる要因なのです。とまあいろいろ用語をこねくり回しても仕方ないので、この本の中で先に見たような主体自己が成立している場面として例示されている、人間が生きているということに根差した活動であるとする(この特徴が)「音楽演奏の行為」を概略的に見てみましょう。先ほどの説明で主体自己の発生過程を理解した方には退屈でしょうが、スプラトゥーンの場合に当てはめる前に「ノエマ・ノエシス相関」や「間主体的なメタノエシス的原理」が実際どのように現れるのか雰囲気をつかんでみてください。

 著者は音楽の演奏に際して3つの契機が必要だと述べます(pp.29-35)。1つ目に、瞬間瞬間の現在で音を生成する行為。2つ目に、自分の生成した音を聞いて表象する意識的な側面。3つ目に、これから生成する音を休止も含めて先取りして現在の音楽に未来の方向性を与えること。音を作り出し、その音を聞きながら音の間隙も考慮に入れて次にどんな音を出そうか決定する一連の音楽行為の3側面ですね。そのうえで、第1の契機こそが生物としての人間の活動である音楽という行為の背後にある、「もっとも原始的で根源的な形での生命の迸り」(p.31)を直接に実現していると続けます。例として挙げられていた酩酊状態での音楽行為は確かに第2、3の契機は弱まっている一方、第1の契機は強く表れているなと僕も納得しました。

 いま確認した第1の契機のような、主体の一瞬一瞬の行為的側面のことを「ノエシス」と呼び、第2の契機に色濃く表れるような、ノエシスの運動を束にして全体的なまとまりとして(空間的に)認識する意識の働きのことを「ノエマ」と表します。僕は自分で読む際に、ノエシスは一階時間微分(d/dt)的なやつであって、瞬間、運動、と思いながら、またノエマは知覚の束、意識、表象とか思いながら読み進めておりました。

 さらにこれらノエシス的作用とノエマ的作用の2つは独立に存在せず、一元的であると言います。切っても切れない関係ということでしょう。というのも、瞬間瞬間に聞こえてくるままの音を経験したことがありますか?もしくは想像できますか?われわれは既に生成された音楽か、未来に予期された音楽といったノエマ的表象しか意識できないのです。しかし、一瞬一瞬の音を知覚できなくてもそれらの音が存在しない限り音楽が成立しないようにノエマ的表象はノエシス的な作用を前提としており、このような表裏一体のノエシス・ノエマの相関関係をドイツのヴァイツゼッカーの言葉を引いて「ゲシュタルトクライス」と説明しています。そしてゲシュタルトクライスにおいて、世界との出会いの原理としての「主体」(ヴァイツゼッカーは「主体」の一側面を世界との出会いの原理ととらえています(p.22)。世界と関わっているところに主体が成立、生成するということです。なので世界との関わりをやめると主体は消滅することになります。)が二重に成立していて、一方では自己の「内部」でノエシス的に生命の根拠一般と出会う主体であり、またもう一方ではノエマ的に自己の「外部」で音楽世界と出会う主体であると書きます(p.34)。

 ところで二段落前のところでは、無言で第3の契機を飛ばしたのですが、ノエシス・ノエマの導入が済んだ今改めて説明いたします。振り返りますと、第3の契機とは、聞こえてくる音楽や音と音の間隙から次の音を創造するという未来を産出する行為のことでした。しかし、音やその間隙を考えてそれに続く音を作り出すといっても何を基準に考えるのでしょうか、疑問が湧く人もいるでしょう。実はこの決定の根源となっていたのが「生命一般の根拠」なのだと著者は述べます(p.106)。われわれは生きものである人間として、既に生み出された音楽のあとにどのような音楽が続くのが心地よく、また「自然で」あるかを感じ取ってそれに従って音を出すと。ここで勘違いしてはいけないのは、生命一般の根拠=自分の行動、という等式が成り立っているわけではありません。生命一般の根拠はあくまで根拠でありそれ以上でもそれ以下でもありません。世界と出会う主体の行を推進する力ではありますが、それは主体の唯一無二の「個別的身体」を通過して初めて個別性を獲得すると著者は書きます(pp.183-186)。生命一般の根拠はそれぞれ固有で絶対的な各自の「身体」に「自然な」関係を持たせ、一つの表現様態として身体の上でようやく顕現する。音楽の例で言えば、これまでの音の流れのイメージが次に作り出す「自然な」続きの音というのが絶対一意に定まるものではなく、各自にとって「自然な」音の運びが様々に生まれてくるのと一緒でしょう。典型的なコード進行にもパターンがあるのもその一例だと思います。反対に、身体を通じて主体的に関わりを継続しない限りこの根拠は対象化できない、未知性を本質としているものであるとも言えます。加えてこの時、生命一般の根拠は自然さノエシスの運動に方向性を与える「ノエシスのノエシス」として「メタノエシス」の立場にあると言います(pp.63-65)(僕は二階時間微分(d^2/dt^2)的なイメージを持ちながら読み進めていました)。このように、生命あるものとして与えられた今ここにある自分の身体を通じて未知の生命一般の根拠との実践的・行為的な関係を維持することで自己の単独性、つまり個性を獲得しているのです。

 

 さて僕の稚拙な文章で伝わっていますでしょうか。もうあと一歩です。ここまで見た論理は個人のレベルにおいても成り立つ関係性です。最後に集団、チームのレベルで現れる「間主体的なメタノエシス的原理」について説明します。これもまた本書の中(pp.36-45)ですぐ上の例の延長として挙げられる「合奏の構造」をなぞりながら具体的に確認してみるのがよいでしょう。

 まず著者は合奏を大まかに3つの場合に分けます。第1段階として、各演奏者が各自のパートを楽譜通りに正確に演奏する時。第2段階として、優れたリーダーや指揮者のもとで合奏が行われる場合。第3段階として、リーダーや指揮者が存在しないにもかかわらず、各演奏者が一定の技術や芸術性に富んでいるため各自が自分勝手な演奏を行っても自然に合奏が成立するような理想的な場合。第1段階では音楽が自分のノエマ的演奏の「内部」のみで鳴っていて心理的には内部的な意識から抜け出すことはなく、逆に第2段階ではリーダー・指揮者=「外部」から音が鳴っているように聞こえると述べます。第3段階において音の鳴る場所がとても特殊で、このケースでの音のありかが本書の題名にもなっている、「あいだ」と説明されるものなのです。

 この境地で鳴っている音楽は自分のパートの音楽のみならず、他のパートの演奏をすべて含めた全体の合奏でさえもノエシス的な「自然さ」でもって自己に帰属しているように体験される。しかしそれと同時にそしてこれまた自然に、音楽の生まれる場所が自分の外部である他の演奏者に移って自分もそこに溶け込むような感じがするということも想定できると。すなわちこの場面で音楽のありかは、自分の外部でありかつ内部であるような物理的にあり得ない「虚の空間」にあるとしか説明できません。そしてこの空間を演奏者どうしの「あいだ」と本書の著者は呼んでいます。「あいだ」においては個々の演奏者のノエシス的作用と、全体の演奏のノエシス的作用との方向性が溶け合っているように思えますよね。個々のノエシスが、音楽の生まれる場所にして虚の空間である「あいだ」の虚構的なノエシス面と渾然一体になって未来の自然な演奏を産出していく構造を「間主体的なメタノエシス的原理」と呼ぶのです。

 上で、個人のレベルにおいてノエシスとノエマに「ゲシュタルトクライス」の関係があると示しましたが、個人のノエシス面が集団のノエシス面に止揚し「間主体的なメタノエシス的原理」として「あいだ」のノエシス面となったならば、それと個人のノエマ面との間に「ゲシュタルトクライス」が成り立っていると言い表すことが可能です。合奏の理想的境地では、「生命一般の根拠」を各々が共有し合っているために絶対的な他であるはずの他人の身体を通じて「自然と」出てきた音でさえも、あたかも自分の内部からのものであると思うくらい同一化してしまいます。個々人全員にとって自然なものとして経験されることで、あり得るはずのない間主体的なノエシス面が形成されるのです。ノエシス面とは主体の一瞬一瞬の行為的側面でした。虚のノエシス面における主体という原理は、各演奏者によって演奏者全員が一つになった有機体の主体性として仮想されることになります。これにて形成された主体の「外部」にある虚のノエシス面は、個のノエシス面に先行して各自のノエマ的意識に表象を送り出し、個々の主体内部のノエシスによる未知=未来の先取り行為の方向性を決定づける「間主体的なメタノエシス的原理」の姿をとると著者は書きます(pp.53-56)。また、個人のレベルでの「メタノエシス」作用でも見たように、全体としての一体感を感じながら共通の生命一般の根拠と関わるときも、身体を持つ限りにおいてその成員の主体は、個性を、そして他人の身体の絶対的他である自己の身体の唯一性から、自己をも手に入れている論じます(p.144、p.156)。

 ちなみに「あいだ」が外部性と内部性を持つという不思議さについて「それ(「あいだ」:引用者注)が本来ノエシス的な現象であるのにノエマ的にしか意識されないという、その二重構造から来ている」(p.42)と解説していますが、これに説明を加えるのはやや話が脱線するので省略します。

 

スプラトゥーンへの回帰_________

 『あいだ』の論理を大雑把に紹介したところで再度スプラトゥーンのガチマッチ等の試合について振り返ってみましょう。試合に一貫して働く共通の生命一般の根拠をあえて言語化するならばそれは、敗北(=その試合における「死」)を回避する衝動だと現時点では考えます。つまり勝利を目指し、勝利に関わろうとする根源的で「自然」な「ヴァーチャルな身体」の動きとも表現できましょう。ですがいつどのように敗北が訪れるかはわからないですし、裏を返せば、この先確実に勝利を獲得できるという保証はほとんどありません。その意味で勝利は未来的、不可知的、未知的であると言えるでしょう。そのため僕らプレイヤーはチームとして、勝利のための理想的な「自然さ」に自身のヴァーチャルな身体を通じて関係し続けるのです。

 ところで、プレイヤーのデスが「死」に値するのではないかとお思いになる方もいるでしょう。がしかし僕はそれは違うと考えており、スプラトゥーンの場合はその説明がとても容易にできます。ギアパワーの<カムバック>や<復活ペナルティアップ>を思い出してください。あれらのギアパワーはプレイヤーのデスを前提としており、勝つための自然な流れとしてのデスが既に予測されていることが分かります。この点でプレイヤーのデスは決して完全に不可知的ではないので、対象として不可知であるという特徴を持つ生命一般の根拠とはなり得ないと結論付けることができます。また、ここにおける敗北は現実の死とかなり性格が異なっているため現実では起きえない現象が起こりえます。それが、最初のほうで確認した、負けてしまったのにもかかわらず爽快感や心地よさの余韻があとに残る試合が存在することです。本来、死が訪れた瞬間には余韻に浸るなどといった生ぬるいことはできるはずはありません。しかし、ゲームの世界では「死」後に実際このような感覚を抱く場合が確実にあると思いますので僕は敗北を回避しようとするこの根拠を、111ページで想定されている「社会的生存の根拠」にならって「仮想的生存一般の根拠」と勝手に名付けております。

 余談はさておいて、プレイヤーとしての自然な身体の運動がそのままチームとしての勝利への自然な事の運びと重なり合う時に「間主体的なノエシス・ノエマ相関」が働いていると僕は考えます。僕たちは決して完全に把握しきることのない強い根拠との関わりを目指して、ヴァーチャルな身体がインクを塗り、ステージ中を移動し、センプクし、キルをとるよう現実の身体がコントローラーを操作する。これらの瞬間瞬間の行為的側面はノエシス的作用にあたり、一方で塗り状況や周囲の味方及び敵の位置、聞こえてくる音、また自分が触るコントローラーの振動などの視覚・聴覚・触覚を統合し一つの表象を与える意識がノエマ的側面と対応するでしょう。

 さてここでもノエシス・ノエマは互いに「ゲシュタルトクライス」の関係にあると直観することができます。一瞬一瞬のプレイヤーの行動が周囲の塗り状況や、敵味方の状況に変化を与えるのは容易に理解できると思います。さらにその状況の変化に応じてプレイヤーはその行動を決定しますよね。塗るべきか、センプクするべきかいろいろな選択肢の中で勝利というゴールに向かうのに自分にとって最も自然な選択を行わせるのです。

 そのうえ個人の中でのゲシュタルトクライス関係は、成員が共有する超個人的な生命一般の根拠を通じて集合的なものに止揚するのでした。そして個人にとって「自然だ」と思われた選択が、あらゆる人にとって自然な音の運びというのが多数考えられるように、他の味方にも自然な選択として浮かび上がり、その行動後に更新された塗り状況や、敵味方の生存状況などのノエマ的表象が個々人のノエシス面に回帰してヴァーチャルな身体がまた状態を更新し…という円環が成立するのです。結果チームは「勝利」という4人のメンバーによって共有された根拠のもとで自律性を獲得し、一つの有機体のように運動するに至ります。このようにしてガチマッチをプレイしているときに「間主体的なメタノエシス的原理」=「あいだ」が醸成されるのです。

 とは言いつつも「あいだ」を発生させるためには基本操作や、イカロールとかチャージキープとかちょっとした技術から応用テクニック、射程やインク消費量がどのくらいかとかの知識などの基礎事項を事前に身につけておかなければなりません。これは楽譜通りに演奏をするための基本の習得と重なるところがあるでしょう。熟練しろと今ここで言うのはとても簡単ですが、行うは難しで、時間と労力がたくさんかかります。しかしながら、それらをある程度「自然に」実行できるような水準に達することで開かれるのがまさにあの「あいだ」の地平。そこで僕たちは絶えず敗北の危機に晒されながら、チームの成員と共通の「仮想的生命一般の根拠」と自己の内部で関わり続けんとするが故にヴァーチャルな身体を通じて自分固有のやり方で勝利のための「死を賭した跳躍」(p.145)を行う。それと同時に自分のヴァーチャルな身体の絶対的外部にあるはずの仲間たちも同様にそれぞれ固有のやり方で未来を切り開いてゆくが、それは絶対的他性を帯びながらあたかも自分から出たような自然さを感じさせる。そしてついに、この状況の持続において「私は生きている」という命題が真となるのです。僕は、スプラトゥーンをプレイする楽しさの正体は、チームとして未知=仮想的生存の根拠と関わり続けようとする生き物としての原始的な衝動だと思っております。最後にもう一度この本の中で一番印象的な箇所を引用して本文を終えたいと思います。

―「個別的な意識の主体性を止揚した集合的・間主体的で自律的なノエシス・ノエマ相関」(p.54)

 

終わりに_________

 ここまでお読みいただきありがとうございます。いかがでしたか?雑に書くつもりで、ちゃんと雑に書いたのですが想像の何倍も長くなってしまいました(しかも文章が未熟で本当に申し訳ないです。本当はもっと色々考えられることがあるのでいずれどこかの会誌でもう一回ちゃんと書きたいですね)。これを読んだ皆様の内側でスプラトゥーンひいてはゲーム全般との関わり方に何かポジティブな変化が起きたならば、筆者として嬉しさこの上ないです。僕は『あいだ』を読んでゲームとの関わり方が一新されました。スプラトゥーンをプレイする時に主体自己の成立の契機が存在すると論理的に確信してしまった僕は、これからはゲームは何も生まないみたいな言説は全て跳ね除けて『スプラトゥーン3』の世界をこれまで以上に楽しませていただきますことを、ここに誓います。

 

ほな カイサン!!!

医療用ゲームの話

あいさつ

先日学部の成績開示で無事一通り合格をいただき、何とか年を越せそうで安心しているヤタガラスです。

学部の授業日程の都合で、不合格の場合は12/28とかに追試受けることになるんですよね。
年末に帰省を予定する一人暮らしの学生たちには少し意地悪な日程です。
まぁ、単位落としても追試で拾ってもらえるだけ優しい方ですが...。

 

さてさて、本会初となるアドベントカレンダー企画も残すところあと4本。いよいよ大詰めですね。
そんなわけで、この一か月の成果をまじまじと眺めていたのですが...

考えてみると、私好き勝手にゲームの宣伝してばっかりだな~と思ったわけです。

まぁ、そもそもこの企画自体好き勝手にゲームの話をする趣旨で開催されていますが、企画の終わりが見えてきたところで、東大生らしく学術論文をベースにした色物記事を一つぐらい差し込んでもいいと思うのです。

 

ということで、昨日の医療系ゲームの流れを引き継ぎまして、今回は”医療用”ゲーム『EndeavorRx』のお話です。

 

 

EndeavorRxとは?

EndeavorRx』は、デジタル治療用アプリケーションを開発するアメリカのベンチャー企業、Akili Interactive Labsにより設計されたデジタルゲームです。

 

ゲームシステムとしては比較的シンプルで、スマートフォンやタブレット端末を利用する典型的なステージ制のランニングアクションです。プレイヤーは、キャラクターを乗せた小型のホバー機を端末を傾けて左右に操作し、バリアをかわしたり、ゲートを通過したりと様々な課題をクリアしながら蛇行する道を進んでいきます。

ステージをクリアするごとにより難易度の高いステージが解放されるほか、ゲーム内通貨を獲得してキャラクターのコスチュームや新規キャラクターを解放するなど、総じてかなりゲームらしいゲームといえるかと思います。

 

ストーリーはSFもので、プレイヤーは宇宙を超えて活躍する軍人見習いとして、様々な世界を巡ります。
訪れる世界は文明的な環境だったり、マグマが噴き出る灼熱地帯だったり、あるいは単なる宇宙空間のような場所だったりと様々ですが、多くの場合は崩壊寸前の危険な状態であり、そこでプレイヤーは与えられた仕事をこなしていきます。

ゲームプレイに関わる仕事の一つが各世界に生息している各種クリーチャーの保護で、各ステージ中で突如出現するクリーチャーをタップして捕獲していく必要があります。

 

デジタル治療におけるEndeavorRx

大まかなゲームの紹介をしたところでようやく本題ですが、EndeavorRxは通常配布目的ではなく、ADHD(注意欠如・多動症)治療を目的として設計されました。

ADHDは学齢期の児童に見られる発達障害で、3~7%程度とかなり高めの有病率が報告されています。
症状は多岐にわたりますが、特徴的なのは物忘れや気の散りやすさといった「不注意」、じっとしていられない、落ち着きがないといった「多動性」の2点です。
現行の治療法としては、環境や行動療法のほか、薬物による神経伝達物質の調製といった感じです。

 

EndeavorRxの有効性は、600人以上のADHDと診断された小児を対象とした臨床試験において評価されました。結果、1日25分、週5日、4週間以上のEndeavorRxのプレイによって小児の注意力・抑制制御能力が有意に改善することが示されました。
何より重要なのは副作用が全く見られなかったことで、薬物療法で頻発する副作用が大きな問題になっている中では強力なアドバンテージといえるでしょう。

 

このような有効性を踏まえて、EndeavorRxは2020年にアメリカのFDA(食品医薬品局)によって、8~12歳の小児のADHDに対するデジタル治療機器として承認されました。
もっと簡潔に書くなら、このゲームはADHD患者に対して、薬や医療機器と同様に”処方される”形で利用されることになったわけです。

 

EndeavorRxのデジタル治療への適正についてですが、まずもって”子供たちはゲームが好きだから”という点を、Akili社の最高医学責任者であるAnil Jina氏はインタビューにて指摘しています。
実際、ゲームとしての完成度は学校の学習用で使われる”なんちゃってゲーム”的なものを遥かに超え、言われなければ医療用とはまず思わないものかと思います。

些細な問題ですが、従来の治療では小児が薬を飲まなかったり、治療行為を嫌がることも少なくないので、非常に重要です。

 

注意力の改善という面でも、ゲームシステムに多くの工夫が込められています。
ランニングアクションゲームは、刻一刻と変化する状況の中で、その時々に合わせて道を見て、障害物を認識してと、ポイントを切り替えつつ継続して集中する必要があります。

同時に、先ほどさらっと書いた「クリーチャーの捕獲」が加わってきます。
単純に画面に出現したクリーチャーをタップするだけなら決して難しくはありませんが、実際にはステージ開始時点でステージ中に出現する3体以上のクリーチャーの姿が表示され、そのうち捕獲しなければいけないクリーチャーは1体だけ、他のクリーチャーはいずれも無視しなければいけないシステムとなっています。
つまり、ステージ開始時に捕獲するクリーチャーの姿を覚えて、そのクリーチャーが実際に現れた時にはタップして捕獲、違うクリーチャーならタップしたい気持ちを抑えてスルーという、多段階の処理が加わります。

こういったゲームシステムの中で生じるプレイヤーのタスクの一つ一つが、いずれもADHDにおいて停滞している注意力・制御能力の改善に働くようです。

 

極めつけはゲームの難易度設定です。

他の病気と同じで、ADHDの程度は患者ごとに変わってきます。
EndeavorRxは、患者のADHDの診断レベルに基づいて初期ステージの難易度が変化します。
さらに、プレイ期間中に随時、患者のリザルトによってステージ難易度を補正して、程よい難易度を保つように設計されているようです。

 

おわりに

一風変わったゲームのお話、いかがでしたでしょうか?

Endeavorのような処方用ゲームのほかにも、より大規模な市場を求めて、薬局の医薬品のように一般向けに販売できる医療用ゲームも作成・発売が進められています。

まだまだ発展途上な市場にはなりますが、神経疾患や発達障害に対するゲームの潜在的な有効性に注目が集まっている現在、今後の「ゲーム治療」の展開に期待したいところですね。

それでは、本日はこんなところで。

 

参考資料

https://www.endeavorrx.com/ EndeavorRx
https://themedicinemaker.com/discovery-development/the-story-behind-an-fda-approved-video-game-treatment-for-adhd#:~:text=This%20is%20a%20big%20difference,vary%20from%20player%20to%20player. Stephanie Sutton 、『The Story Behind Akili Interactive’s FDA-Approved Video Game How Akili won FDA approval for EndeavorRx – the first “game-based digital therapeutic” for children with ADHD』、02/14/2022
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/heart/k-04-003.html 厚生労働省、『ADHD(注意欠如・多動症)の診断と治療』、最終更新日:2021年11月12日

 

 

疑義照会ってご存知ですか。

Introduction

 このカレンダー企画が始まってから既に3週間弱経過していることに驚きを隠せません。日数感覚も覚束なくなるほどの多忙さに苦しんでいる私Xana-chanです。

 

 本日紹介するゲームは、ちょうど昨日の私を苦しめていた課題を追体験できるようなものです。

 その名も「疑義照会ウォーズ」です。

 このゲームを通して、我々は疑義照会を体験することができます。

疑義照会ってなんぞ

 疑義照会とは、端的に言えば「薬剤師が薬剤の処方内容に関して、処方箋の発行医師に問い合わせること」です。あまり一般には意識されない業務だと思われますが、薬剤師の調剤業務における義務の一つです。

ゲーム紹介

 本作は上述の疑義照会を行うことがメインのゲームとなっています。Papers, Pleaseの薬剤師版と表現した方が伝わりやすいかもしれません。実際の薬剤師が製作に大きく携わっており、割とリアルな作りになっています。

ここだけの話

 ゲーム紹介をしておいて何なんですが、実は私は本作を購入しておりません。ゲームの存在は発売前から聞き齧っていましたが、ついぞ自身ではプレイしておりません。

 

 というのもSteamのレビューや実況動画を調べていただければ、納得していただける部分もあるかとは思うのですが、本作を購入して楽しむには割とハードルが高いのです。詳細は省きますが、私には楽しめないと判断しました。

じゃあなんで紹介してんねん

 その理由はいつもの自分語り、かつ薬に関する興味を少しでも布教したいがためです。薬学科に属する現役学生として、世の中の薬剤師は(おそらく一般の方の想定以上に)苦労しているということを知っていただきたく、本作を紹介いたしました。

総括

 世の中にはいろんなゲームがありますが、時には本作のようにジャンル自体がマニアックなゲームをプレイしてみてはいかがでしょうか。勝手ながら明日の記事からはそんな雰囲気を感じています。

 

 あと薬剤に関する知識を身につけて損はしないと思うので、まだ進振りに悩んでいるB1の方には薬学部のことも少し検討していただけると嬉しいです。

 

 

  *今年は薬学部定員割れしたらしいですね(噂)

 

 本当はもっと凝った記事にする予定だったのですが、前日の徹夜につき体がボロボロなのでこれくらいで勘弁してください…

最後に自分語りと宣伝

  • 12月チャンミはグレードA3位でした()
  • 有馬記念の入場抽選当たりました。
  • 年末のコミケで頒布する会誌、今回もどうにか寄稿しました。よろしくお願いいたします。

ファイアーエムブレム風花雪月の話

こんにちは

TGA23の六ペンと申します。今回は私が最近4周目をクリアした、大好きなゲームの一つである、ファイアーエムブレム風花雪月の紅花の章ルナティック(引継ぎなし)のプレイ雑感について書きたいと思います。あくまで一個人の感想なのでちょっと引っかかるところがあるかもしれませんがご容赦ください。

前提として

私は今回

  • 外伝・クエスト以外のフリー戦闘と過度の稼ぎ、スカウト、ピンの厳選を禁止したうえでなるべく多くの戦闘会話を見る
  • 一部のスキル獲得のための場合を除き兵種はゲーム内で王道とされているもの(別ルートで敵として出るときの兵種またはその進化系の最上級職)にする
  • 味方の死人は出さない(リセット上等)
  • ステージの敵は基本的にすべて倒し、保護対象の友軍は基本的に守る

といった条件でプレイしました。

キャラの雑感

特に物理攻撃の命中率を30%以下にできる回避盾アサシンのペトラと応撃持ちでボウナイトやサンダーストーム持ちに対処できるイエリッツァが優秀だった印象です。攻守が安定し、アイムールの破壊力も大きいエーデルガルトや連撃アタッカーのフェルディナント、一発の破壊力の大きいカスパルなども仕事はこなしてくれましたがエーデルガルトとフェルディナントは機動力と力補正によって強みを十分に発揮できるドラゴンマスターのほうが、カスパルは命中が安定する点を活かしたグラップラー系のほうがやはり向いていると思いました。それ以外のキャラは通常プレイとさほど変わらない育成方針でしたが、戦技が優秀なベルナデッタや長射程+追加効果もちの魔法使いのヒューベルトがとりわけ使いやすかったです。主人公に関しては常にステータスが他キャラよりも高かったのもありますが、天帝の剣やサンダーソード+、倭刀を使って常に前線で戦わせていました。

ステージの雑感

特に碌な騎馬特攻持ちのキャラがいない状態での初期二回の死神騎士戦、キャラが二人抜ける聖墓の戦い、飛行系がいないことがネックになるガルグ=マク防衛戦と外伝の地の底に広がる闇・異境の空と地と、物量で押し切られかねないデアドラの戦い、ゴーレムがやたら強くなるフェルディアの戦いあたりがきつかった印象です。ラスボスに関してはエーデルガルトの狂嵐でHPをゴリゴリ削っていました。逆に以前プレイしたとききつかった外伝の天山いまだ越えずはペトラと主人公でドラゴンナイトの大半を抑えられたので案外楽で、タルティーン平原の戦いも増援にさえ気を付ければ楽にクリアできました。

総評

他の章と比べると最もプレイングの影響が強く難易度も結構高かったですが、個々のキャラの特徴が如実に表れたり、新しい発見や逆境を乗り越えたときの達成感などはこれまで以上に大きいなど、やっていてとても楽しかったです。やはりファイアーエムブレム風花雪月は最高ですね。これより前に他3つの章もほぼ同様の条件でプレイしているので機会があればそちらについても書いていけたらいいと思います。

GeoGuessrの話

あいさつ

こんにちは、4本目の記事で首位独走中のヤタガラスです。
まぁ、何のことはなくて、試験やら何やら諸々終わって突出して暇なだけなんですがね...。
おかげさまで、ポケモンのDLC分の図鑑集めも早々に終わり、あまつさえ現在steamのセールでDLC込みで3000円未満という破格で販売されていたモンハンriseを購入するに至った次第です。

 

それはともかく、いよいよ師走も後半に入り、我らがTGAでは代替えが意識される季節となってまいりました。

先日も会議があり、役職配分と活動方針の検討を行ったわけですが、各自が思い思いに持ち寄ったゲームを楽しもうと集まったサークルの中で面倒な役職を請け負いたいと思うはずもなく、中々に難航致しました...。
すると、やっぱりもうちょっとアクティブな会員を増やしたいな~という思惑が例年のごとく浮上するわけでございます。

さしあたっては、今回は奇跡的にこの記事を読んでくれている来年度の新入会員候補者に向けて、東大生が好みそうなゲームのお話をさせていただきます。

 

ということで、本日は『GeoGuessr』のお話です。

 

Geoguessrとは

GeoGuessr』は、ランダムなgoogleストリートビューが出題され、周辺の風景からgoogleマップ上の現在地を特定するブラウザゲームです。

 

基本モードの場合、ゲームを開始するとこんな↓感じでストリートビューが表示されます。

軽く探索しながら手がかりを集めて、右下にあるGoogleマップ上で予想した現在地を指すと、正解の位置が表示されて、回答が距離に応じて5000点満点で評価されます。

5000点満点中4000点ちょっとなので、まずまずでしょうか?
大学の試験で8割も取れたら舞い上がってしまいます。

ちなみに、世界マップで5000点を出そうとすると、猶予誤差は200m弱となります。

 

GeoGuessrは、2013年に公開されて以来youtube等の動画配信サービスにて度々取り上げられてきました。
コロナ禍のころにも再流行していたので、名前は覚えていなくとも、プレイ動画を見たことはあるという方は多いんじゃないでしょうか?

 

元はシンプルな場所当てゲームでしたが、現在は出題地点からの距離を競う『Distance』や出題される国を当てる『Countries』という区分にて、複数人で勝負して勝ち残りを目指すマルチプレイヤーモードや、1対1の『Duels』といった対戦モードが追加されているほか、それらの成績に基づくレーティングやランクマッチが整備されています。
こういった競技的な側面の展開は目覚ましく、今年の10月にはストックホルムにて、賞金総額5万ドルの史上初の世界大会が実施されるまでに至っています。

 

世界マップのすゝめ

GeoGuessrでは、ストリートビューの中で出題範囲を規定する「マップ」が複数存在します。
公式マップであれば、オーソドックスな世界全体マップのほかに、世界の有名な建造物の近くが出題される「Famous Places」、アジア限定の「Asia」、日本限定の「Japan」などなど、比較的シンプルな地域区分やお題に沿ったマップが用意されています。他にも、個人でマップを作成する機能も備わっており、Googleマップ上の範囲を指定したり、出題地点を一つ一つ選択したりすることができます。

 

 

さて、唐突な質問ですが、皆さんがこのゲームをプレイするとして、どんなマップでプレイしますか?

 

日本のGeoGuessrプレイヤーの大半は、日本マップでのプレイを選ぶかと思います。実際に、私の周辺にもこのゲームをプレイしている学生は数人いますが、世界マップでプレイしている人はほとんど見ません...。

理由ですが、当然ながら日本マップでは文字を読めば場所が分かり、快適にプレイできるからかと思われます。玄人向けの要素として、電柱のプレートや電話番号を利用した地域特定、路面標示による都道府県特定などもありますが、そういった知識がなくともプレイできる点で、比較的とっつきやすいと言えるでしょう。

対する世界マップは、土地を示す看板があっても読めず、植生や風景にも馴染みがない地域が多いため、かなりの難易度となっています。
先のプレイ画面の紹介では、タイ国内なのに得点が4000点ほどとなっていましたが、範囲がとにかく広いため、国を1つ外すだけで、あるいは国は当たっているのに国内で回答した地域が違うだけで、得点がガクッと下がってしまうのも、難しいポイントですね。

 

ただ、覚える要素を絞れば決して無理な難易度ではありません。何より、出題範囲が広い分だけ、楽しみも多いのです。

まずは時間制限なしで国当てのcountry streaksに挑戦して、少しずつ当てられる国を増やしていきましょう。文字の先端に小さな丸がついているのはタイ、横断歩道標識に横線が1本通っているのはポーランド、車のナンバープレートの左側に赤い縦帯が見えたらキルギスなど、ピンポイントで特定できるものがおすすめです。
そこから徐々に、ナンバープレートが前後両方黄色でヨーロッパならオランダかルクセンブルク、南米ならコロンビアといった分岐が入るもの、アフリカの左側通行地域で乾燥して山がちなら南アフリカ、砂っぽい地面で山が少なく平坦ならボツワナ、植物が多めならエスワティニといった少し曖昧なものへと範囲を広げていくのが順当かと思います。
国ごとの各種情報は、youtubeの動画やブログにまとめられているので割愛しておきます。

国当てのマルチモードは回答権が3回与えられるので、2~3回に1回くらいのペースで国を当てられるようになれば、ある程度は戦えるようになります。また、1戦に1回だけ、回答を2択に絞ってくれる機能があるので、もしかしたらソロモードよりも当てやすいかもしれません。

ランクマッチに参加していないうちは負けても気にすることはないので、気楽にどんどん挑戦していきましょう!

 

終わりに

前項では世界マップをおすすめしましたが、日本マップでも時間や移動に制限をかけたり、ほかの人と勝負したりすると、通常プレイ以上に手ごたえのあるプレイになるかと思います。

また、個人が作成したマップの中にも、マクドナルド限定マップや世界のホラースポット限定マップなど、かなりユニークなものがあるので、世界マップに限らず、日本から飛び出してみるとかなり楽しめます。

シングルプレイヤーモードなら無課金でも楽しめますので、ぜひぜひ一度遊んでみてください!

それから、来年度以降もTGAをどうぞよろしくお願いいたします~

 

『ぷよぷよ』シリーズの連鎖ボイスについて

はじめに

こんにちは。せなおまると申します。
前回非常にまとまりのない雑文を書いてしまい、もう少しちゃんと(?)ゲームの話をすべきだ!ということで再び書かせていただきました。

 

私は『ぷよぷよ! 15th anniversary』で初めて『ぷよぷよ』シリーズ(以下『ぷよ』)に触れ、それ以前の作品も後の作品も含めて何作かプレイしています。
特に連鎖を組むのが上手くなることには興味はなくて、連鎖に応じて決まったパターンのボイスが聞けるのが楽しくてプレイしている割と変な層です。
今回は、そんな変な層の視点から、連鎖ボイス的に優れた『ぷよ』の作品がどれなのかを考えてみたいと思います。

 

ボイスパターンの変遷

①『ぷよぷよ』

シリーズ1作目であるこの作品では、まだボイスが後の作品ほど充実していませんでした。
連鎖で唱えられるボイスは4種で、2連鎖目から順に唱えられ、5連鎖目以降は4つめのボイスを繰り返すパターンになっています。

 

②『ぷよぷよ通』~『ぷよぷよSUN』

各キャラのボイスは7種で構成されており、1連鎖目から順に唱えられ、7連鎖目以降は7つ目のボイスを繰り返すパターンになっています。

 

☆次のグループの前に……

これ以降の作品の連鎖ボイスは、次のように分類することで見通しよくパターンを捉えることができます。
・連鎖の最後などに使われるキメ技
・キメ技の直前に使われるボイス
・通常の連鎖における上記以外のもの
(・相殺などが絡む一定の条件下で登場するもの)
上から3つを便宜的に「フィニッシュ」「強化ボイス」「通常ボイス」と呼ぶことにします。

 

強化ボイスには特殊な仕様があります。それは、強化ボイスの後に発生するフィニッシュでは、頭の一文字が直前の強化ボイスの個数に応じて重なって唱えられるというものです。
例)
『ダイアキュート』(強化)→『ア・アイスストーム』(フィニッシュ)
『ダイアキュート』→『ダイアキュート』→『ダイアキュート』→『ば・ば・ば・ばよえ~ん』(フィニッシュ)
この仕様は『ぷよ』の原作である『魔導物語』に由来するもので、個人的にとても好きな仕様です。

 

③『ぷよぷよフィーバー』『ぷよぷよフィーバーチュー!』

連鎖ボイスは主に通常ボイスで構成され、最後に強化+フィニッシュが使われます。大きな連鎖では(強化+)フィニッシュを途中に挟むことがあります。
後の作品と異なるこの2作の連鎖ボイスの特徴は、ボイスパターンが複雑であることです。
理由の一つには、キャラごとにボイスの数が異なることがあります。「アミティ」や「アルル」は通常ボイスが4種ですが、「ラフィーナ」や「リデル 」は5種の通常ボイスを持ちます。
それ以上に、この2作ではパターンやフィニッシュの種類が連鎖数以外の要因によって変化することが知られています。詳しくは知らないのですが、消したぷよの数などが絡んでいると考えられているようです。

 

④『ぷよぷよ!』『ぷよぷよ7』

この2作では、方向性としては③を踏まえつつ、全キャラのボイス数が統一(通常4+強化1+フィニッシュ5)され、連鎖数のみによって決まったパターンのボイスが唱えられます。
例)
5連鎖:通常1→通常2→通常3→通常4→フィニッシュ2
12連鎖:通常1→通常2→通常3→強化→フィニッシュ1→通常3→通常4→強化→フィニッシュ2→強化→強化→フィニッシュ4
なお、『ぷよぷよ7』に存在するルール「だいへんしん」におけるだいへんしん中には、これと全く異なる連鎖ボイスパターンが採用されています。

 

⑤『ぷよぷよ!!』『ぷよぷよクロニクル』など

ルールに応じてボイスパターンが変わるようになりました。
「ぷよぷよ」では①に近いもの、「ぷよぷよ通」などのルールでは②が採用されています。
「ぷよぷよフィーバー」などでは③に近いものが採用されていますが、変更点として、9連鎖以上で途中に挿入されるようになるフィニッシュがフィニッシュ1・2からフィニッシュ2・3に変わっています。これによって、強化ボイスにより頭の一文字が重なったフィニッシュ1が存在しなくなりました。

 

⑥『ぷよぷよeスポーツ』

基本的に連鎖中は数字を読み上げるボイスに変更され、キャラごとに異なるのは最後のフィニッシュのみになりました。

 

結論

ここまでシリーズ各作品における連鎖ボイスパターンをまとめてきました。
①や②(およびそれに準拠したパターン)は、もちろん古くからのプレイヤーにとっては馴染み深いものだと思いますが、大連鎖の後半が全て同じボイスになってしまう点は、後の作品と比較して優れているとは言い難いでしょう。また、⑥のパターンはキャラクターの個性が薄まってしまうもので、初めて聞いた時残念に思った記憶が強いです。
先に記した④と⑤の違いも踏まえると、『ぷよ』作品のうち連鎖ボイス的に優れた作品とは③あるいは④であると結論づけられます。
なお、この記事の内容(特に価値判断の部分)は全て結論ありきで書いたものですので、みなさんはそれぞれ信じる作品のボイスパターンを愛し続けていただければ幸いです。今まで気にしたことがなかった方は、ぜひ連鎖ボイスも楽しみながら『ぷよ』を遊んでみてくださいね。